地上へ追放された俺は国を造って反撃する!
UFOのソース味
第一章 反撃への狼煙
プロローグ 地上への墜落
「最後に言い残すことはあるか」
「特に、ないな」
黒ずくめの男を従えた女性は口元に手の甲をあて少し笑った。深くフードを被っているためか口元しか伺えない。赤い口紅を塗った薄い唇は、この寒空の下で嫌に美しく見えた。
ここは天空都市から外に向かう橋。渡りきってしまったら二度と戻ってこれないと、子供の頃からよく脅されていた。
ただ、実際には暗闇が広がっているだけ。橋そのものは途中で崩壊しているため、渡り切る前に地面に向かって堕ちていくのだろう。
「殺人は許可されていないの。魔法の使えないクズでも処分してはいけない。だから、こんな手温いやり方しかないわけ」
気温の調節機能は、天空都市のエリアから外れると止まってしまい、凍えるような寒さに襲われる。なのに、まるで寒さを感じていないのか、悠々とした動きで、掌をこちらに向けた。
「ほんとうに残念。魔法なんて人殺しの道具でしかないのに無意味に神聖化されてしまっている。悲劇だわ。魔力を失った貴方には理解できないでしょうけど」
杖を使わず発動ができるのは一握りの魔法使いしかいない。しかも詠唱せずに魔法の行使ができるのは、上級氏族でもほとんどいない。この見知らぬ女性の能力の高さが伺える。
「言い残すことなし、と記録しておいてね」
「かしこまりました」
魔法が展開されていくのをぼんやりと見ていた。死。この都市の人々が最も忌み嫌うもの。こんなに呆気なく、それも追放されて死ぬなんて思いもよらなかった。
眼前に淡く煌びやかな青白い光が広がる。あまりの眩しさに目を閉じると、ふわっと浮いた感触がして、雲を見下ろすほどに高く位置する天空都市から、俺は堕ちていた。
地上とは、興味と恐れの入り混じった複雑な場所だった。
生きていくためには、地上で収穫した作物を食べなければならず、建設用の石材や鉱石もすべて地上に依存している。けれど、古代の誓約により、天の民は地上へ降りることは許されず、ただ配給される物資を受け取るしかない。
そんな穢れた場所に堕ちていく。時間が経つほどに、速度は増して、凄まじい量の空気が身体を通り過ぎる。
このまま地面に衝突して跡形もなく飛び散るだろう。ありがたいことに痛みもなく一瞬のうちに終わりそうだ。
雲を見上げるという初めての経験を最後に意識を手放した。もう戻ることはないと理解して、そっと。
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