ろっくわめ
あまりよろしくない位置で遊び始めた
「ハクちゃーん」
「......なに?」
呼び掛けると不機嫌そうな返事をするハク。顔こそ見えないがむすっとした表情をしているに違いない。
「そろそろ降りてくれないかなー、って」
「......あぁ、ごめん」
素直に言う事を聞いたハクは、うんしょ、と立ち上がった。そしてローブを叩いて埃を落としている。
改めて立ち上がっているハクを見たレオガイア。その身長からは5,6歳児にしか見えない。それにしては大人びた口調を見せる時もあったし、外見相応の言動もあった。直接聞かなければこの謎は解けないだろう。
それに、ここが誰も住んでいないはずのボロ屋敷、という事もある。やはりハクは謎が多かった。
「そう言えば、お礼を言っていなかった。助けてくれてありがとう。あの薬が無ければ僕は死んでいた」
「......あ、うん......どういたしまして......?」
レオガイアのお礼に対し、ハクは何処かぎこちなく言葉を返した。
「それで、何か礼をさせてくれないかな」
「......ん? ......さっき、貰った......」
「いや、言葉だけじゃなくてね......」
「......自白薬、飲んでくれた......それで十分」
確かに、ハクが出した交換条件はそれだった。謎の液体を飲む代わりに回復薬を、というもの。
真っ直ぐと言い切ったハクを見て、レオガイアは心苦しくなる。レオガイアは既にハクが何らかの形で製薬をしている、と疑っていなかった。子供の遊びではなく、非常に高い能力を持った薬剤師である、と。
そんなハクが作った自白薬。これもまた高い効果があったのだろう。彼女は実験が出来ただけで満足しているらしいが、レオガイアはそれを舐めただけで残りを捨てた。つまり、実験は成立していない。
ふと、ある事を思い出す。
「そう言えば、ハクは僕が本当の事を喋った、という確証はあるのかい?」
「......え......?」
「いや、だって自白薬を飲んで話したからと言って、事実と照らし合わせなきゃ効果があるかどうかは......」
レオガイアがそう告げると、ハクは頭を抱えた。漸く先程の実験にあった大きな穴に気付いたのだろう。
最初から破綻していた実験だった、ということでレオガイアの良心の呵責が若干和らいだ。
「......たしかに......」
うー、と呻いたハク。蹲った状態で数秒程考え、1つの答えを導き出した。
「......よし。......私が飲むから、強盗さん......質問して......」
「強盗さんって......まぁ、いいか。分かった、どんな質問をすればいいかな?」
「......分かんない」
確かに、ハクは質問を作るのが苦手だった。自分の時も名前と年齢、怪我に関する事しか聞かれなかったな、と苦笑した。
「じゃあ、聞かないでほしいこととかはあるかい?」
幼いとは言えハクも女の子。聞かれたくない質問もあるだろう。最低限のマナーは守る予定だったが、他にもあるかと訊ねたのだ。
「......名前は......ハク、だから......聞かないで......」
と、ハクが弱々しい声で呟いた。レオガイアはその言葉の意味を薄らと理解した。
(捨て子、なのか......本名は聞かないで欲しい、ということだろうな)
こんな人気の無い場所に、たった1人で居るという事が謎だった。しかし、そう考えれば納得は出来ないが筋は通る。
ただ、孤児院では無くこんな屋敷に放置した意図は分からなかった。
「わかった。聞かないから安心して」
俯いてしまったハクの頭を撫でる。すると、ビクッとハクは過剰な反応を示した。
「あ、ごめん」
「......う、ううん......だいじょーぶ......」
失礼だったか、とレオガイアは手を離した。
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