きゅーうわめ
「くぁぁぁ............よし、今日もこれにしよ」
魔力枯渇による全身疲労、少量ながらも食べ物を胃に詰めた事による満腹感で、少女には睡魔が襲いかかってきていた。堪らず欠伸をした少女は一冊の本を掴んでベッドに飛び込んだ。
魔力増幅の為に一日の殆どを気絶していた少女だが、段々と目覚めて回復するまでの時間が短くなっていた。肉体が魔力の強制拡張に慣れ始めていたのだ。しかし、伴う吐き気や頭痛、倦怠感などは変わらない。間隔の短くなった苦痛を日々味わっていった。
何時の頃からか、気絶することが無くなった。頭痛等が酷く、まともに動けることは出来なかったものの、ぶつんっと気絶しなくなったのだ。明らかな成長を確信した少女は嬉々として身を襲う激痛を受け入れ、そして更に鞭を振るうようになった。
と言っても倒れた方が楽だぞ、と肉体が睡眠を求めても無視を決め込み、知識を得る為に本を読むだけである。
少女の押し込められた屋敷には古い本が幾つもあり、魔導書以外の本に少女は手を付け始めていた。
そして今、少女が興味を持ち読み耽っているものが──
「『錬金術』......やはり興味深い」
──少女の言葉通り、錬金術というものである。
本棚で随分とボロボロな本を見つけ、興味本位に開いてみたらそれだった。錬金術、というワードに惹かれた訳では無い。少女には何らかの思惑があったのだ。例えば錬金術を習得する事で生活が便利になるのでは、とか。生存の可能性を高められるのでは、とか。
開き覗いてみれば、錬金術の方法を非常にわかり難く記してある書物であった。とことん分かり難く、難解に書かれており、常人では触れることが出来ない領域だと暗に示しているのでは、というのが少女の見解だ。
これをコツコツと読み進め、錬金術を会得しようと少女は考えた。初めの1ページ目から心を折るような言葉の数々に苦しめられたが、少女は気力を振り絞り読んでいく。その動力源は偏に錬金術への憧れ。一心不乱に古びた本を読む姿は、錬金術という単語に心を奪われた少女であった。
そして読み始めてから数日が経ち、漸く錬金術の取っ掛りを見つけることが出来た。
「先ずは道具......デカい鍋と混ぜる棒」
ベッドから飛び降り、台所へと駆けていく。その足取りは非常に鈍く、テトテトという効果音が似合う速度であった。
台所で鍋を探したが良い物は見つからない。そこにあったのは料理に適したサイズの鍋のみ。少女は料理を作りたいのではない。錬金をしたいのだ。その為にはそれなりの容積のある器が欲しかった。
キョロキョロと視線を這わせていくと、水瓶に目をつけた。鍋よりはマシかなとこの水瓶を錬金する鍋とする事に決めた。
よし、と少女は水瓶に手を掛けた。何処かスペースのある所へと運び出そうと決めたのだ。流石に使わないとは言え台所を錬金場には使えない。
力を入れ、水瓶を手前に引っ張る。
「んーーーーっ!!」
しかしビクリともしない。幼い少女、ましてや栄養失調気味の6歳児の力では動かせなかった。
「ふぅ......ここでやるしかない......か......」
少女は潔く諦めた。
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