第21話 幼少期

僕は、最初の記憶からペットショップにいた。


まわりにいる子供達は、ある程度育つといかつめな大人に車に乗せられてずっと帰って来ない。


あの子と手紙のやりとりをしようと言っても、ずっとくることはなかった。


僕もその時が来た。

けど…いつもと違う優しい笑顔の大人だった。


その人に連れられてきたのは、

だいぶ遠い田舎の神社だった。


その日からその人は僕の“父上”になった。


父上はいつも笑顔で優しい顔をしていたが

その顔で僕を叱ったりする。

表情で感情を読めない人だった。


厳しくて叱られてばかりだったが

外のことを色々教えてくれた。

あのペットショップでは、50冊のいつまでもラインナップが変わらない本と

10数個の薄汚いおもちゃしかなかった。

けど、父上はたくさんの本と景色、経験をさせてくれた。


みんなも楽しくて、きっと手紙を書くのを忘れてしまったんだろうと思うことにした。


『ここがお前の場所だ。』


と言われた時はとても嬉しかったのを覚えている。

あそこに戻らなくていい、気持ちが晴れた気がした。


でも人は生きてる以上、不幸なことも起きてしまう。


自分が住んでいる神社が経営難で無くなってしまうかもしれないと父上に話される。

僕は、自分を居場所を守るためになにか策がないかと考え始めた。


僕は中学生くらいの頃から、お姉さんとデートをしてお小遣いをもらっていた。

それは20を過ぎる頃も続けていた。

お小遣いを貰えるし、ご飯をご馳走してもらえるし、たまにヤれるからバイトをしないでいいと思ってた。


でも最近になって僕のようなことをやっている女の子を『パパ活女子』と呼ばれ、非難されていることを知る。


僕って世間から見たら汚いと思われるのかな…と少しショックを受けたが現実は違った。


僕によってくる女性はみんな、目をキラつかせて僕に寄ってくる。

みんな見た目が良ければ、中身は二の次なんだ。


だからまずはSNSで女性を集客しようと、僕が映った写真をたくさん載せていった。

それを機におみくじ、お守り、お清めの塩、御神酒を経費ギリギリで作った。


女性は来るようになったけど、まだまだ神社を維持するには足りなかった。


僕は何かないかと、インスピレーションを沸かせるために街に出てのんびり散歩していた時、運命的な出会いをした。


今の時代に似合わないブラウン管TVに、懐かしい番組が放送されている。

もしかしたらビデオだったのかもしれない。


『人間の体内でアルコールが作れる。』


というタイトルが僕の目をクギ付けにさせた。


これだ!と思い早速行動に出た。

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