第20話 真実

ペチペチ…


「おーい。」


ペチペチぺチ…


「おーい。いい加減起きてくださーい。」


「ん…んん…」


目がパチパチと動く。


「おはようございます。金武さん。」


「また…なんで…」


「だって見学したいって言ったのは、金武さんですよ?こちらのやり方に従ってください。」


何回言ったらわかるんだ?

飲み込みが悪い人は、脳みそ的にも、身体的にも嫌いなんだけどな。


「それで…椅子に張りつけのまま、どう見学するんだ?」


「あぁ、それなら大丈夫です。台車があるんで。」


扉にかけてある台車を指差す。


「見学した後、私はどうなる?」


「そうですねぇ…、まあまあな年齢ですが体つきはいいみたいなので手伝ってもらいます。」


「手伝い?」


「はい。まあしばらくは地下生活かもしれないです。金武さん次第ですけどね。」


「なんだそれ。どういうことなんだ!」


ガタガタと椅子を揺らす金武さん。

そんなに暴れなくても見せますってば…なんでみんなここに来るとせっかちになるんだろう。


「そんなに暴れないでください。椅子が壊れたらまた移動させないといけないんですから。よいしょーっと。」


金武さんを台車に乗せる。

やっぱり成人男性はコスパが悪かったかなぁ。


「これから見学しに行くんで、落ちないように気をつけてくださいね。」


急傾斜の簡易スロープを渡り、配合場に行く。


「どこに向かってる?この声はなんだ?ほかにも誰か拘束してるのか?」


「質問責めは、モテませんよ。ま、もうそんな心配してもしょうがないか。」


「質問に答えろ!」


「あぁあぁ、そんなに揺らさないでください。危ないですよ。今は配合場に向かってます。」


「配合場?」


「はい、お酒を複数ブレンドしてるんです。これがなかなか難しいんです。個体差があるので。」


「個体差?機械に個体差なんかないだろ。」


「いいえ。機械なんて、一言も言ってないですよ。」


配合場の扉を開け、金武さんが乗った台車を入れる。


「なんだよ…これ…。」


「だから配合場って言ったじゃないですか。出来立てをそこのテーブル…」


「なんで人間が裸でいるんだ!みんな朦朧としてるぞ!」


「え?だから、この人たちの体液を配合してお酒にしてるんです。」


「はぁ…!?お前何言ってるんだ!離せよ!」


ガタガタと台車が揺れて金武さんと一緒に椅子が倒れる。


「だから言ったじゃないですか、危ないって。あなた結構重いんですから自覚してください。」


金武さんごと椅子を起こす。


「なんでこんなことが…、あ、あの人たちは!」


「はい、この間一緒に釜の飯食べた人たちですよ。僕のことを気に入ってた子なんか結構優秀なんですよね。やっぱり、こういうのって惹かれる運命なんですかねぇ…。」


「みんなを離してくれ!俺だけ!俺だけここに閉じ込めていればいいじゃないか!みんなを心配している人がいるんだ!」


「必死に頼む人間の顔って、いつ見ても飽きないんですよね。でも無理です。男と女がいてこのお酒は成り立っているんです。」


金武さんにもここを手伝ってもらうんだから

仕組みを話さなくちゃね。

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