第59話 髪

やっと髪が腰をこすぐらいの長さになった。


縛っているので、周りはこの長さに気づかないけれど、


このまま伸ばして、日本髪でも結おうかと思っている。


文欽高島田を自分の髪で結うには、もっと長くないと


いけないそうで、まだまだかかりそうだ。


その日、ちょっと気分を変えたくて、髪型を変えて出かけた。


目の前を通り過ぎて行ったトラックに、その髪をひっかけられた。


運転手は気づいていないのか、スピードを上げる。


変な引っ張られ方をされ、髪が首に巻きついて、そのまま引きずられる。


死ぬ……死ぬ……、そう思ったとき、髪がほどけて、


道路の脇に放り出されるようにして、横になった。


あちこち擦りむいたけれど、命に別状はないようだ。


でも髪は切った。女の命、というけれど……。


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