第56話 シャワー

ホテルに泊まって、そろそろ寝ようと電気を消す。


それまでも、何か嫌な感じがしていたけれど、


辺りが暗くなると、急にそうした感じが強くなった。


何かいる。誰かいる……。


見られている感じが強くして、目を開けて、辺りを見回す。


誰もいるはずがない。でも、もう一度電気をつけた。


四畳半ぐらいに、ベッドと小さなテーブルがあるだけの、


こじんまりとしたビジネスホテルだ。


真っ暗だと怖いけれど、電気がついていると眠れない。


お風呂の電気をつけ、細く扉を開けておくことにした。


うっすらとした明かり……これで安心して眠れる。


うとうとしてきたとき、急に水音が聞こえてきた。


シャワーだ……。誰かがシャワーを浴びている……。


細く開けた扉から、水音が聞こえてくるのだ。


やっぱり誰かいた。水音が止まった。扉がゆっくりと開く。


誰かがでてくる。怖い、出てこないで!


そう願っても、それは濡れたまま、そこから出てきた。


……私だった。私がそこから、全裸ででてきた。


じゃあ、ここにいるのは誰? 私をみている私は、何者?


目が合った。向こうはニコリと笑った。


私は、もう私をとりもどせなくなった。

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