第39話 詐欺

通帳からお金が消えた。私は銀行に出向く。


「詐欺に遭ったみたいなんです。残高が急にゼロになって」


「はぁ……。でも、ご自身で動かされましたよね?」


「何を言っているんですか? 動かしていません」


「ネットバンキングに申し込まれて、それで動かしましたよね?」


「ネットバンキングなんてやっていません。詐欺師がやったんです」


話にならない。警察にいくことにする。


「銀行の口座から、お金がなくなって……」


「ふつうのこと、ですよね?」


「ちがいます。詐欺に遭ったんです。誰かに引き出されたんです」


「ご自身でつかったのではないのですか?」


「もしそうなら、警察に来ません!」


どうしてみんな、私のいうことを聞いてくれないの?


信じてくれないの? それは私が、詐欺師だから?


詐欺師が、詐欺師に騙されてお金を盗まれても、誰も何もしてくれない。


でも、警察にタレこんだと思われた私は、多分殺される。


お金もなくなり、消されるんだ……。どうせなら、お金と一緒に


消されたかった。これじゃあ、三途の川の渡し賃もない。

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