第40話 後部座席

一人で車を運転していると、不意に後ろに誰かいる、


後部座席に誰かすわっている、と感じることはありませんか?


私は何度もあります。


そうなるともう後ろは見られません。


前だけを向いて、まっすぐに家に帰ってきます。


でもそれって、得体の知れない者を家まで連れ帰っている


ことになるのでは? そう考えたこともあります。


その日も、不意に人の気配を感じました。


バックミラーやサイドミラーでさえ、もう見ることができません。


ただひたすら、前だけをむいて運転します。


よかった、家までたどり着いた……。


後ろに乗せておいた荷物を下ろさなきゃ……。


そう思って、後部座席から死体を引きずり下ろす。


得体の知れない者を連れ帰るのは嫌だけれど、


死体となった者を連れ帰るのが、私の仕事ですから。

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