第16話 川

川は、楽しい遊び場だ。


流れている水が、より遊びの幅を広げてくれる。


しかし川に入ると、意外とその底にある石が滑り、


立っているのが難しいことに気づく。


しかし川遊びをしていれば、倒れるなんてふつうのこと。


びしょびしょになることさえ気にしなければ、


どうってことのない話だ。


ただ、みんなで川遊びをしていて、最後に水から


上がるときは、注意した方がいい。


川も、子供たちと遊びたいのだ。


だから後ろ髪をひかれたら、それは川が引き留めている。


そしてそのとき転んだら、それは川に引っ張られている。


脚をとられている。きっと帰らないで、と言われている。


最後の人は、ここに残って、ということなのだ。


大抵のところは、そうは言っても帰ることはできるだろう。


でも、川によってはその思いが強すぎて、


人を手放さないところもあるかもしれない。


もし転んだ後、自ら上がっても、ふり返ってはいけない。


だって、そこには流れていく水に映る自分がいる。


それが「おいで、おいで」と呼んでいるかもしれないから。


それは、決して水に流せないものだから。

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