第47話ジュリエット
「ところで。グレースちゃんってジュリエットの家は解っているの?」
何も考えず車に乗ったが果たして家を知っているのかどうか。
「え?ジュリエットってピンク色の髪の毛してるでしょう?」
「うん。そうね。珍しい・・。」
あっ・・・!珍しい何て言って良かったのかしら?!
この世界では普通かもしれないのに。
思わずポロりと出た発言に失笑した。
「ピンク、水色に黄緑?それに紫だっけ?ねー?ルカ!移民の人ってそうよね?」
グレースちゃんは確認するように運転手のルカ君に話し掛ける。
「そうですね。そんな感じです。最近はあんなにハッキリしたピンク色はあまり見掛けなくなりましたが。」
ルカ君はそう言って運転しながら頷いた。
あの子、移民なんだ?!
「メリーマリープリティー?だったかしら?150年くらい前に暴動とか災害とかで経済破綻した国よ!」
グレースちゃんはうんうんと頷きながら私の顔を見た。
「プラゲ国も多額の支援したんじゃなかった?」
グレースちゃんに聞かれて、あーそうだったわねーと話を合わせた。
メリーマリープリティー?何その可愛い国の名前。ゲームだからねえ?
んんん?でも何か聞き覚えがある。
メリーマリープリティー・・・。
メリマリプリ!!!?そうだわ!あったあったあったー!
私が高校生の頃流行ったソシャゲのゲーム会社だわ!
恋愛シュミレーション課金系のゲームで学生の課金が社会問題になった会社だ。
同級生も沢山やってる人が居て本当に流行っていたんだけど。
学生課金による裁判沙汰も多々あったみたいで経営破綻。
その後にプラネットゲームが買収した。
それでプラゲのゲームが恋愛シュミレーション系も強くなったのよねぇ。
あら?・・・プラゲって・・・。
繋がっちゃった。
日本の名前はプラネットゲーム社から来てるんだわ。
そっかあ。だからプラゲか。うんうん。
あー!何か勝手にスッキリした気分。
「どうしたの?ねーさん?」
私の顔を見てグレースちゃんが首を傾げる。
「いや。確かに支援してたなあって思って。歴史って忘れちゃうわよね。」
上手く誤魔化せたかな?
「私達が生まれる前の頃ですしね。他国にも結構、住み移ったみたいなのよね。メリマリ国人。今はちゃんと我が国の国民よ!」
移民と言っても差別される事は無く受け入れられている。移民街と呼ばれる地域には住んでいる者が殆どだけれども。
と、ルカ君はそう言った。
「でもねー。流石に元貴族との結婚は厳しいのよね。一般庶民でも難しいのよ。」
グレースちゃんの言う事も最もだ。普通の成金でもそりゃ難しいだろう。
それをやってやろうとしているのがジュリエットか。
強かな子なのね。
「もう着くわよ。移民街メリーバード。」
見えてきたらしい街は別に区画線も無く本当に傍から見たら何処からか解らない感じだった。
車を降りて気づいたのは日本で言う昭和の団地っぽい建物が何棟もあった。
商店兼住まいみたいな家が幾つかあって一戸建ては見当たらない。
なるほど。
差別は無いと言いつつ彼等なりに感じている所はあるのだろう。結構古そうな建物だし。
「ねえ、建物いっぱいだけど?」
「あー。本当だわ。そこまで気にした事なかったし。」
グレースちゃんと団地を見渡してこれは聞くしか無いなと顔を見合わせた。
「待ってなさい。聞いてくるから。」
仕方ない。
調度、八百屋さんの店主とお客さんが見えたのでそこへ向かった。
八百屋の店主は黄緑の髪に白髪混じりでお客さんの女性は黒髪ベースに少し紫が混ざっていた。
本当にこの髪は天然なのね。
「すみません。お尋ねします。ホワイトさんのお宅は御存知ですか?」
急に話しかけた私に少し驚かれたけれど。
「あー。あの娘さんが有名私立に特待生で入ったホワイトさんね?」
「あぁ。ホワイトさんねぇ。」
何故か二人は苦笑。
そして親切に団地と部屋番号を教えてくれた。
チラリとベイリー家の高級車を見てあの子の同級生?と聞いてきた。
「ええ。まあそうですね。」
答えるとふーん?と何か塩対応。
「教えて頂きありがとうございました。」
お礼を言ってその場を去ろうとすると店の御主人が言った。
「ホワイトさんは学校で迷惑かけて無いかい?あの子の母親があれだから。」
「?あれって?」
何か含みのある言葉だ。
「卒業したら娘は玉の輿に乗るって毎日自慢しているわよ?本当なの?」
今度はお客さんがちょっと馬鹿にした様に笑いながら訪ねてきた。
そう言う感じなのか。あの娘の親ですもんねぇ。文化祭の時も感じ悪かったし。
車に乗り込み説明をした。
団地はA棟らしく少し車を走らせた。
「ここみたいね。」
本当に作りは日本の団地だわ。
エレベーターも無い階段下に郵便受けが幾つもあった。
「ホワイト。これね。」
グレースちゃんが指差した。
「結構、きついわね!」
「そんなもんよ。」
一段が高く上りにくい階段を上る。
四階は遠いわぁ。
四階の右手にホワイトと表札があった。
「えっ?ここ?!玄関?狭い・・。」
グレースちゃんはボソッと呟いてこれよね?と確認してインターホンを鳴らした。
ベイリー家からするとかなり小さく感じるのだろう。
やや怪訝そうだ。
中からパタパタと足音が聞こえた。
いよいよ・・・決戦ね!
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