卒業式そしてホワイトデー

第45話しぶとい女

日本の卒業式と季節は変わらずアーシェンバード国も3月が卒業式。しかも14日のホワイトデーだそうだ。


いかにも乙女ゲームと言うか。

私はゲームをクリアしていないから解らないけれど。ホワイトデーの返事でハッピーエンドってオチだったのだろうと予想出来る。



そんなまだ少し肌寒いが春の足音がする3月に入った日曜日の事。


ベイリー家に突然の訪問者。


迎え出てみるとケイトちゃんだった。


「グレース様!!アリスねーさん!!・・・うう・・うゎーん!!」

出会うなり私達の顔を見て泣き出す彼女。


「ちょっと大丈夫?落ち着いて。グレースちゃんの部屋に行きましょう!」

「ケイト様?何があったんです!?」


かなり驚いた。

まさか玄関先で泣き崩れちゃうなんて。余程の事があったに違いない。


グレースちゃんの部屋のソファに座ってもらい泣き止むのを優しい言葉をかけながら待った。


メイドさんにお茶もお願いして持って来て貰いケイトちゃんに勧める。


言葉にならない声で泣きながらケイトちゃんも深呼吸。


「はぁ。少し落ち着きました。」

もう目は真っ赤だ。


グスグスと鼻をすすりながらケイトちゃんはお茶をゴクリと飲んだ。

何だか出会った頃のグレースちゃんみたいだわ・・・。


あっ・・・まじでそうなのかも。


言いにくそうにチラッと私達の顔を見てケイトちゃんは目をつぶった。


「バレンタインデーにローガンが。」

そう言って私達の顔をキッと睨む様に見詰めて。

「ジュリエットからチョコレートを受け取っていましたの!!」


「はぁー?!!」

「嘘っ!???!」

思わず私達も叫んでしまった。


「嘘ではありませんわ!もー!!ローガンったら信じられ無い!」

ケイトちゃんは泣いたり怒ったり忙しい。

彼女が言うにはチョコレートを受け取ったのは内緒にされていたらしい。

グレースちゃんの時もそうだったけれど仲良しのお喋りメイドさんは何処にでも居る様で。

ローガン君の家のメイドさんからの密告とケイトちゃんは言っていた。


「この国のバレンタインデーのチョコレートは本命にしかあげないのよね?と言う事はローガン君があの女の本命?」


アンディー君の誕生日パーティーに来て男を物色したり。挙句の果てにはルーカス王子をダンスに誘ったり。


全く!節操なしな女ね!!


「そうだと思います。ローガン受け取っちゃったし。だから・・ホワイトデーに返事をするんじゃないかな。」


私達の間に沈黙と深い溜息。

もう一度深い溜息の後にグレースちゃんが済まなさそうな顔をして口を開いた。

「あの・・ね?ちょっと言い難いのだけれど。」

ケイトちゃんの顔をチラッと見て何故か助けを求めるかのように私を見詰めた。

「グレースちゃん?どうしたの?話して。」

グレースちゃんは大きく深呼吸して口を開いた。


「あのー。ねーさんにも話して無かったんだけど。ジュリエットはアンディーにもチョコレートを渡そうとしていたの・・・。アンディーは受け取らなかったんだけど。」

私とケイトちゃんはグレースちゃんの顔をマジか?と言う顔で見詰めてしまった。


グレースちゃんは気まずそうに必死でアンディーが受け取らなかったって自慢したい訳じゃないし!そう言うつもりで言った訳では無いのよ!!

とワタワタと捲し立てる様に早口で言った後に。


「何かごめん。」

と言って頭を下げた。


「大丈夫よ・・。えっと。と言うことは。ローガンだけでは無く?本命がアンディー様もだったの?かしら?」

ケイトちゃんは目をパチパチさせて私に同意を求める様に訴えかける。


「そうね。下手な鉄砲、数撃ちゃ当たる?的な感じかしら。もしかしたらまだ渡した男の子が居るかもよ?」

有り得る。

なんて言うか義理チョコ文化に似てるが。きっと彼女は全部が本命?


または、アンディー君にフラれたからローガン君に行った可能性が濃厚だが・・これは黙っておこう。


「ジュリエットが狙っていた他の2人は大丈夫なのかな?」

グレースちゃんはレオ君とエドワード君と話をしているのだろう。


「確かめて見ますわ!」

ケイトちゃんはスマホを取り出してジャスミンちゃんとジェニファーちゃんにメールをしている模様。


さっきまで泣いてた子が今度はお怒りモードだ。

それ程、この国でのバレンタインの本命チョコに対する想いは深いみたい。


良かった。私、下手したら量産して配りまくる所だったわぁ。

色んな所から勘違いや恨み買ってたわね。


確認してみるとジェニファーちゃんとジャスミンちゃんからメールが来てから小一時間後くらいだろうか。


メイドさんが来客だと言って来て部屋に通されたのは怒り顔のジェニファーちゃんとジャスミンちゃんだった。


「あの女!!私のエドワードにチョコレート渡していましたの!!しかもエドワードは黙っていたなんて!!」

怒りMAXのジェニファーちゃん。


「信じられ無いですがレオは裏切りました。でも、本命チョコをレオだけで無く他の2人にも配ったジュリエットが1番許せませんわ!!」

静かな怒りを見せるジャスミンちゃん。


あー。これは波乱の幕開けなのかしらぁ?

卒業式前に悪役令嬢達が再結成される日が再びやってくるとは・・・。

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