第42話メリークリスマス

「久しぶりだな。」

う・・・うん。私は黙って頷いた。


「そんなに?忙しかったのか?」

全然、気にしてない様に彼は優しく微笑んだ。

そりゃそうか。


私の気持ちは言ってない。


私だけ気不味い。


私の顔を真面目な顔をしてルーカスは見詰める。

「今日は暇そうに見えるが?」

「うん。今日はこれからベイリー家でクリスマスパーティー?だけど。」


ルーカスは軽く頷きながら呆れた様に溜息をついた。

「私も今日は城でパーティーだ。何処も同じだな。全く自由にさせて欲しいものだ。」

そっちの溜息か。

家族仲と言うか王家の皆様は仲良さそうだけど。

ルーカスはパーティーは本来はあまり好きでは無いと言っていたからかな。


「さて、アリス。今度は断るなよ?そのうちメールする。」


「・・・・。解った。強引なんだから。」

ルーカスの自信満々な顔に苦笑しながらやっぱり私はこの人と会いたいと思っているんだなあと実感した。


次・・か。気持ちが友達に戻れるかしらね。


「アリス?」

「何?」

ルーカスは優しく微笑んだ。


「メリークリスマス。」

ポケットから綺麗にラッピングされた小さな箱を取り出して私の目の前に置いた。

「これは?プレゼント?」

に見える。


「お前にやろう。じゃあまたな!」

ニヤリとちょっと照れた様でカッコつけた様な表情でルーカスはクルッと背を向けてまた王族達の元へ戻って行こうと歩きだした。


「あっ。ありがとう!!」

そう呼び止めたけど彼は振り返らずに手を振った。


「ありがとう・・・。照れてんのかしらね。」

私は目の前の小さな箱を見詰める。

このサイズは・・・指輪!?とか?


えっと。えっと?!

コソコソとポケットに仕舞う。

後で開けよう。


あぁ。どうしよう。この気持ちを忘れるとか諦めるとか・・・。


無理!!!


「ねーさん?どうしたの?ぼーっとしてるわよ?」

顔を上げるとグレースちゃんが御挨拶から戻ってきて私の目の前に立っていた。


「あっ!!えっと。ちょっとルーカスと・・ね?」

苦笑するとグレースちゃんは悪そうな顔でニヤニヤと。

「ふーん?良かったじゃない。」

冷やかされながらも私の心情は嬉しい様な嬉しくない様な複雑な気持ちだった。



帰宅後。


ベイリー家では家族だけのクリスマスパーティーが開かれた。


七面鳥の丸焼きとか初めて食べた。

ケーキも美味しかったし他の料理も凄く豪華だったけど。私の心はあのプレゼントの中身が気になって気になって仕方ない!!


普段は控えめなお酒がついつい進んでしまいフラ付きながら部屋へ戻った。


ルーカスめ!全く何考えてんのかしら!!

「それにしても。あー。飲み過ぎたわぁ!」

シャンパンとか久々だったし。

ソファにドサッと座り込む。


さて、机の上には小箱が。


大きく深呼吸して可愛いラッピングを解いていく。


やっぱり宝石っぽい。


そっと箱を開けた。


「わぁ!可愛い!!」

ハートの金のピアスだ。


ちょっとちょっと!指輪じゃなかったけど!これ・・・凄く嬉しいんだけど。


早速付けて見た。


鏡には酒で顔が赤くなった私にハートのピアスが似合ってるわね!

「かーわーいーいー!!」


テンションが高過ぎるのは酒のせい。


だけど嬉しくて舞い上がっているのは恋のせい。


「ありがと。」


ちゃんとルーカスと向き合わないとダメね。


まだ日にち変わって無い。


メール打とう。


『ルーカス!メリークリスマス!!プレゼントありがとう!本当に嬉しいわ!』


うん。本当に嬉しい。


私のメールから何分もしないうちにルーカスから着信が。


「気に入ったか?」

「ありがとう。凄く可愛い。」

良かったとルーカスは少し笑いながら嬉しそうな声。


たわいも無い話は久しぶりだ。


「今度、そのピアスを付けて見せに来い。」

また上からぁ。でも、私の顔は綻んでいた。


「解った。そうする。」


少し沈黙の後でルーカスは言った。

「メリークリスマス。良い夢を。」

「メリークリスマス。ルーカスもね。」


そう言って電話を切った。


やっぱり好きだわ。


叶わない恋だけど。貴方に婚約者が出来るまで。


私は傍に居たい。


募る想いを胸にクリスマスの夜は更けていった。

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