第16話グレースの本気
土曜日の夜と日曜日とずっとアリスねーさんと話をした。
頑張れるかな。頑張らないと。
私はジュリエットでは無い。彼女の様に男心を掴むのは本当に難しいだろう。
だけど。やる!!!
「着きましたよ。お嬢様。」
「考え事してたわ。ルカ!行ってきます。」
行ってらっしゃいませ。と見送られ決意して校門を潜った。
普段の行動を少し変える。言葉を選んで話す。
心の中でブツブツと唱えながら教室に入った。
「おはよう。」
教室に入るなり皆に自分から挨拶。
普段は皆の挨拶に答える感じなのだけれど。
「おはよう。グレース。」
「おはようございます。」
私に気付いたクラスメイトが笑顔を向けてくれた。
裁判が決まった時はよそよそしかったのに。
勝ってからは皆の態度も少しずつ戻って行った。見た目のお陰もかなりある。
「おはよう。アンディー。」
グイグイ行きたいけれど笑顔で挨拶だけ。
私の顔を見た彼は少しだけ身構えている様に見えた。
誕生日パーティーの件が後ろめたいんだと思う。
でも!本人が言うまで何も言わない。
今迄なら確実に問い詰めていた。
私は何も言わずに笑顔で席に着いた。
うん。これで正解な筈よ。
裁判前の私なら問い詰めるだけじゃなくてアンディーには怒ってただろうし。ジュリエットを来させない様に本人を脅しただろう。
それがダメだったのか。
婚約者だから当然では無かった。
あくまで私達は婚姻を約束をした関係であってそこに愛はまだ無いんだよね。と言うのをアリスねーさんに語られた。まさにそうだと思った。
親同士が決めた婚約と言うのは破局しやすいとアリスねーさんは言う。
「そう言うドラマは沢山見たわ!」
と何か良く解らないけどそうらしい?
思わず俯き深い溜息をつく。
溜息じゃダメだ。明るく元気に・・。
「あの。グレース。」
顔を上げるとアンディーが居た。
「どうしたの?」
何か言いたそうなアンディーにそう聞いた。
(本当にゲスな男は当日まで話さないわよ。)
アリスねーさんはそう言っていた。話してくれたらまだチャンスがある。
「えっと。ごめん。誕生日パーティーの事なんだけど。」
私は見詰めて頷いて聞くだけ。
「来たいって言うから。そのね?断われないからさ。」
しどろもどろ・・・。うん。怒らないわよ。
「ジュリエットさんを招待しました。ご・・ごめん。」
落ち着けー。落ち着けー。怒るな。怒るな。自分に言い聞かせる。
私はそのまま焦らず落ち着いて頷いた。
アリスねーさん!私、大丈夫よ!ちゃんと言えますからね!!
「アンディー。1番最初に踊るのは私とだからね?」
怒りを抑えていると悔しくて自然に涙が浮かんで来た。
「グレース・・。あの。そんなの当たり前じゃないか。」
私の顔を見てアンディーは必死に訴える。
「本当は・・・誰とも踊って欲しくないけれど。・・仕方ないわね!」
キレるな私。ここは笑顔だ!
原因は怒りなのだけれど。自然と流れた涙が功を奏したのかもしれない。
アンディーがそっと私の頬に触れて涙を拭ってくれた。
「グレース・・。」
そんな顔、初めて見た・・・。
切なそうな、申し訳無さそうな。それでいて目は男だ。
何と言い表したら良いのか。
兎に角、射止められそうな目に私も目がクギ付けで言葉が出ない。
見詰めあった時間は本当に数秒だったと思う。だけど凄く長く感じた。
授業開始を知らせるチャイムが鳴った。
「ごめん。グレース。また後でね。」
「うん。アンディー。」
何とか自然に振る舞えたかしら。
顔、絶対赤いわ。
頬が熱いもの。
何だったの今の!!?
泣く気なんて無かったけどそれが良かったの?
あー!今すぐアリスねーさんに話したいぃぃ!
今の言動は正解なの?
次は。また何を話したら良いの?
違う。話しは聞け!だった。自分の事ばかり話しちゃダメ。聞き上手になる事。
自分の話をしても良いけれど。何だっけ?
自慢NG。悪口NG。噂話NG。だったわよね。
授業なんて頭に入らない。
私はそんな事ばかり考えていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます