第6話ご主人はイケメンだけど

恐い方なのかしらー。

グレースちゃんの話ではお父様もお母様も会社の社長さんらしい。どうりでお金持ち。


ドアをノックする音がして「ご主人様が御帰宅されました。」とメイドさんが知らせに来てくれた。


「緊張するわぁ。」

「私も。」

グレースちゃんは年頃の子にアリがちな感じでどうやらお父様が苦手みたい。


果たして専属。この家にオネエを受け入れてくれるのかしら・・・。


ダイニングルームに呼ばれた。夕食は私も一緒にと。


「初めまして!私、有栖川と申します!」

ダイニングルームに入るなり深々と頭を下げた。

「ルーシーに話は聞いているよ。」

優しくて低い声が聞こえて私は顔を上げた。


うっわぁぁぁぁ!40代くらいの凄く!凄ぉーく!イケメンさん!


私、日本男児が好きなのだけれど。背も高いし外国人も良いわね。

イケメンに国境無しね。


「グレースも君も座りなさい。」

ご主人の言葉で我に返って私も座った。


「私はジェイソン・ベイリー。宜しく。」

「宜しくお願いします。」

いやいや本当にカッコイイお顔立ち。

グレースちゃんの髪色は茶色、奥様は栗色、ご主人はゴールドブラウンって感じね。

おじ専では無いけれど。これは好きな顔だわ。


「さて、今のグレースの顔や髪型、ルーシーの化粧具合を見て。アリスガワさん?貴方の腕は確かな様だ。」

ご主人はそう仰った。


「ありがとうございます。」

笑顔だし良いお返事が聞けそうな予感。


「だが・・・。大丈夫かね?」

ご主人は眉間に皺を寄せて私の顔を見た後に奥様の顔を見た。

「貴方?どうされたの?」

ご主人は言いにくそうに奥様に向かって言われた。

「若い男性をこの家に住まわせるんだ。世間体がな。それに・・・グレースと何かあっても困る!」


ん?気付いて無いのかな?


「貴方。それは何とも無いと思うわ。」

奥様が遠回しに宥める様にご主人にそう言った。

「いや。しかしなあ。」


言った方が良いのかしら。

「あのぉ。私、女性には興味ありませんので・・・。」

ボソッと呟いた。

寧ろご主人が自身のご心配をされた方が・・って襲いませんけどね!!


「・・・。あー。なるほど・・。」

ご主人は理解して頂けたのかうんうんと頷かれ私の顔をまじまじと見た。


「貴方。だから宜しいかしら?」

奥様は急かす様にご主人を促した。


「そうだな。本採用は1ヶ月後。それなら認める。」

そう仰った。お試し期間か。良くある話だわね。

1ヶ月分のお給料も高いし。私自身も働けるか暮らして行けるか試したい。


「はい!それでお願いします!」


横でグレースちゃんはホッとした顔をしていた。

「お父様、ありがとうございます。」


ご主人はグレースちゃんを見て溜息を付いた。

「グレースは今回の裁判は勝ったから良い様なものだが。本来なら縁談は破談だったかもしれない。」

チクッと刺さる事を仰っしゃるわね。


その後もチクチク攻撃が。体裁第一主義。


ご主人はイケメンだけれど苦手かもー。

詳しくグレースちゃんに事情聞いた方が良いかもね。

まだ婚約者の事も知らないし。


漸くご主人の愚痴が止まりその頃には夕食も食べ終わっていた。


・・・・・・・・・


私はなかなか豪華な一室を与えられた。ベッドにソファにトイレとお風呂付き。

「これは快適だわぁ。ホテルみたい。」

クローゼットも結構入りそう。

って!!服がこれしか無いじゃない!

「あぁ。何も考えてなかったわ。嫌だわ。明日も同じ服?下着も洗えないなんて!!」

ショック・・・。


仕方ない。明日、一旦マンションに戻ろう。


私の仕事は明日の早速朝から!奥様とグレースちゃんのメイク。


午後からは自宅に着替え等を取りに行く事に決定!


マンションの解約はまだしない方が良いわね。


後、WiFiルーター買おう。電波が入らないこの家では困り過ぎ。


お風呂に入り。

そんな事を考えながらフカフカのベッドで眠りに付いた。

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