そばにいるあの頃の君
勝利だギューちゃん
第1話
テレビをつける。
歌番組だ。
最近、少なくなったな。
女の子のアイドルグループが、唄っている。
よく流れている。
曲は、耳になじんでいる。
覚えやすい。
カラオケで唄っている人も、多いだろう。
でも・・・
当の女の子たちの事は、全く分からない。
ひとりも、名前が出てこない。
顔と一致しない。
俺も、おっさんになったのか?
まあいい。
それも、世の常だ。
倉庫に入る。
箱がある。
開ける。
当時は高校生。
その時に、熱心に応援していた、アイドルグッズがある。
特集本もある。
アイドルグループだ。
たくさんの女の子が、笑顔で写っている。
この中で、今も芸能界で活動しているのは・・・
3人か・・・
よくある「あの人は今」で、彼女たちの近況報告がされていた。
殆どは、専業主婦になっていた。
我が子と一緒に出ていた。
とても、幸せそうだ。
何よりだ。
彼女たちの事は、今でもわかる。
おそらく町で見かけても、気がつくだろう。
もっとも、声をかけるなんて、礼儀知らずな事はしないが・・・
当時は、コンサートで見かけるだけでも、嬉しかったが、
今では、握手会も当たり前。
変わったものだ。
さてと・・・
そろそろかみさんと、子供が帰ってくるな。
出迎えよう。
「パパ、ただいま」
娘が抱きるいてくる。
まだ5歳、かわいい盛りだ。
いつか、離れていくが、しばらくは甘えて欲しい。
「あなた、ただいま」
「お帰り。どうだった?」
「大漁。こんなに買えたよ」
服を見せる。
幼児服に夫人服、俺の背広。
確かに大漁。
でも、釣りじゃないんだから・・・
かみさん。
昔は、アイドルグループで活動していた。
でも、数年後に引退をした。
どうやら思い出作りのために入ったので、芸能界に未練はないようだ。
「大漁に、大量だったな」
「活字で見ないとわからない、親父ギャグは言わないように」
「親父だもん」
俺が、かみさんと出会ったのは、彼女が芸能界引退後。
元芸能人というのは、知っていた。
でも、それを口にはしなかった。
なぜなら・・・
「お前、ひとつ訊いていいか?」
「何?あなた」
「今、幸せか?」
かみさんは、言う。
「うん。今が一番幸せ」
そばにいるあの頃の君 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます