第52話

「カショウ、まさか……。ユールリウス坊っちゃまを脅しているのかっ!?」

「うえぇぇぇー!? 何でそうなるんですか!?」

「何でって、それ以外に聞こえない」

「大丈夫でしゅよ。僕、気にちてないでしゅよ」

「何と寛大な御心をお持ちなのかっ……!

 その上に可愛いなんて、殺しにかかっているとしか言えないっ……!」


 むー……。

この男の子も残念なにおい?がします。

 なんかエリーナみたいです。

エリーナもたまに、おんなじような事叫んでますよ?

 何を叫んでるかよく分からなかったから、かあ様に聞いたら『ふふふ、ユーリにはちょっと分からないと思うわ』って言われました。

 んー……。

僕がもう少し大きくなったら、分かるようになるかもです。

 なので今は、エリーナみたいに叫ぶ人がいてもあまり気にしないようにしてます。

だから僕は気にせずにお話を進めます!


「お名前おちえてくだしゃいっ!」


 叫んでる人を正気?に戻すには、ちょっと大きなお声を出すのがコツなのですよ?

僕、何回もエリーナでやってるから慣れてます。


「……?」

「え? もしかして坊っちゃま、ティオールさんの事知らない?」

「ちらないでしゅよ。カチョはおちえてくれなかったでしゅ」

「え……。あー……? えっ!?」

「大変失礼致しました。

 先程はお名前を頂戴いたしましたのに、遅くなり申し訳ございません。

 私はティオールと申します。ルークディアス様の侍従見習いをしております」

「にい様の?」


 どうやら、にい様の侍従見習い?という事をしてる子だったみたいです。

 言われてみれば、にい様と近いお年のような気もします。

でも侍従って、主人と大体いつも一緒にいる人じゃないですか?

僕、この子見た事ないですよ?


「侍従とは言ってもまだ見習いなので、あまりお側には侍っていないのです」


 へにょりと下がった眉がなんか、情けないとでも言ってるようです。

そういうものなのですか?

でもカショウより空気?読めるから、すぐに侍従となれると思うので気にしなくてもいいと思うのです。


「大丈夫でしゅよ! チオーはすぐに、にい様の侍従になれましゅよ!」

「ユールリウス坊っちゃま……。ありがとうございます……」

「あのー、そろそろ訓練場に入らないと、時間がなくなると思いますよ?」


 カショウッ!

そういうところが空気を読めないと言うのですよ!

 でも、にい様とねえ様のごゆうしを見る時間が減っちゃいますからね!

ここは素直に、カショウの言葉に従う事にします。


 ふっふー!

にい様とねえ様のごゆうし、楽しみです!

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