第12話 僕とかぞく

 うー……。

むにゃむにゃ……。

むっふー!

ゴロンゴロンゴロン……、ポテ……。

ううっ……う? 


「にゃー!! 僕、かんじぇんふっかーつ!! シャッキーン!!」


 元気よくポーズをつけて勢いよく起き上がると、誰もいなかったよ……。

 うっ?

 僕、何してたかな……?

あっ! オリバー様!


 僕はいそいそと、枕を持ち上げてみた。

 う?

何もない……?

ベッドの頭がある方のお布団をめくってみる。

むむぅ。何もない……。

今度はバーンバーンとお布団を叩いてみた。

けふけふっ……。

何も出てこない?

 んーと、んーと。

お部屋をキョロキョロと見てみても何も、な、い……。

どこにも、何も置かれて、ない……。


「うっ。ゔー……。うわぁーんっ!!」


 悲しくなって、涙が出ちゃった。

ううっ。僕、悪い子なの?

悪い子だからオリバー様、プレゼント置いてくれなかったの?

ううっ。僕、悪い子なんだ……。

 そう思ったら、余計に涙が止まらなくなったよ……。


「ユールリウス坊っちゃま! どうされましたか!?」


 いつの間にかやって来た侍女のお姉さんが話しかけてくるけど、僕、泣くのに必死だから応えられないよ。


「診断の結果、体には異常がないとの事だったのに……。

 まさか、急に体調が悪く!? 旦那様か奥様にお知らせを! いえ、その前にマティアス様の方が……」

「ゔぇーんっ!! っゔ……ひっく、っく……ぐっ……」

「ああっ……! ユールリウス坊っちゃま……。お目々が真っ赤になってなんてお痛ましいっ!

 それに、あまり泣きすぎると熱が……。ここはやはり奥様を……」

「その必要はありませんわ」

「奥様っ。ユールリウス坊っちゃまが……!」

「大丈夫ですわ。あとは私が対応します」

「かしこまりましたっ!」


 かあ様……?


「っ、かあしゃ……っ! うわぁーんっ!!」


 かあ様を見た途端、涙がもっと出てきた。

 さっきまでかあ様いなかったのに……。

いつお部屋に来たんだろうと思ったけど今はそんな事よりも、かあ様にぎゅぎゅうっと抱きしめて欲しかったから、両手を広げてかあ様に抱っこを強請る。


「まあまあ、ユーリ。どうしたの? 可愛いお目々が真っ赤になっちゃってるわよ?」 


 直ぐに僕を抱き上げてくれると、かあ様のお膝に向かい合わせにして僕を座らせてくれた。

僕はぎゅうっと力いっぱい抱き付いて、ふわふわのお胸にお顔をぐりぐりとする。

 ぐりぐりぐり……。

僕の悲しみを母様に分かってもらうんだ……。


 ううっ。

 僕、悪い子じゃないもん。オリバー様は誰かと勘違いをしてるんだ。

僕、ちゃんとしゃかしゃか歯磨きもしてるし、にがにがなのもおえーってなるけど、我慢してごっくんしてるよ?

ごっくんした後、お顔がううっーってなっちゃうけど……。

でも僕、悪い子じゃないもん!

それにかあ様に聞いてくれたら「ユーリは良い子です」ってちゃんと答えてくれるよ。

 ううっ、かあ様答えてくれるよね?

僕が良い子だと知ってるよね?

そうじゃないと僕……。うっ……。


「ユーリ、くすぐったいわ。可愛いお顔を母様に見せて?」

「うっ……。あいっ」


 ゆっくりと顔を上げてかあ様をチラチラと見る。


「まあまあ、可愛いお顔が大変な事になってるわよ。まずは、お顔をフキフキしましょうね」

「ううっ……。あい……」


 かあ様が優しく話しかけてくれるから、僕の涙もちょっとずつ減ってきた。

悲しい気持ちはまだ少し残ってるけど、さっきほどじゃないよ。

 かあ様が布で僕の顔をふきふきしてくれて、お鼻もちーんとする。


「それで、ユーリ? どうして泣いていたのかしら? 母様に教えてくれる?

 どこか痛いところができたのかな?」


 痛いとこはないよ。ただ悲しいだけだもん。

 オリバー様に悪い子だと思われているのが悲しいんだもん。

その事、かあ様に言っても大丈夫かなぁ?

かあ様もやっぱり、ユーリは悪い子よ?って言うのかな。


 うーっ。


 悲しい気持ちがちょっと減ってたのに、そう思ったら、また悲しい気持ちが大きくなってきちゃった……。

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