龍門館の慎之介日本忍軍

近衛源二郎

第1話 忍び寄る

あれこれあったものの、さらに5年の月日が流れ。

慎之介は、龍門館の研究所の研究者になっている。

つまりは、先生になっている。

望月雅は、保健室の美少女先生。

月山宗幸と風磨小太郎は、龍門館で教鞭を取るべく、白雲斎に弟子入りしていた。

それなりに、平穏無事な生活を送れていた。

霧隠慎之介、父の跡を継ぎ伊賀忍者の棟梁となっていた。

雅は、甲賀五家に、それほどの人物が出なかったため、甲賀の棟梁、望月玄幼斎の姫君として甲賀忍者をまとめている。

月山宗幸は、もともと奥羽忍者の棟梁の跡継ぎ。

風磨小太郎も、もともと甲斐忍者の棟梁の跡継ぎである。

それまで、龍神池の祠に住んで、学園のペットになっていたガマ介とポセ丸と虎吉の三匹も、それぞれに成長していた。

今では、この三匹が神の化身であることを知らない学生もいる。

四神の東の衛り神、龍神

西の衛り神、白虎と

なぜだか慎之介に助けられたことから着いてきてしまった海神ポセイドン。

その朝、虎吉の咆哮とポセ丸の鳴き声で、慎之介と雅が三匹に近づいた。

『ポセちゃん、どうしたの

 そんなに吠えて。』

ポセ丸、見た目に子犬のまま。

5年も経つのにである。

『おい虎、その姿形で全力の

 咆哮は、生徒まで起きるで。

 何があった。』

慎之介は、三匹からの連絡だと気付いていた。

ガマ介の代わりにポセイドンが吠えて。

白虎は、大声を上げた。

ガマ介の前で、インコがピーピー鳴いている。

『そんなことせんでも。

 お前のエサは、別に用意し

 てたぞ。』

インコに話しかけながら、手のひらに乗せて慎之介は庵に戻った。

『慎ちゃん、その子が来ること

 知っていたのね。』

雅には、バレている。

慎之介と雅、夫婦になって8年もすると、子育ても落ち着き、そろそろかかあ天下になりつつある。

この2人の場合、結婚前からかかあ天下であった。

インコが右の翼だけ持ち上げると手紙が落ちた。

慎之介、その手紙を読みながら、インコに豆を渡している。

『そろそろ、姿を現せ。

 皇朔耶に何があった。

 説明してくれ。』

慎之介が優しくインコに話している。

高千穂忍者の若君、皇朔耶からのSOSである。

沖縄の我那覇一族から攻められているらしい。

慎之介、すでにおかしなことに気がついている。

インコが、両翼を広げ、回ると、インコの足下から紫の煙り。

朱雀が姿を現した。

南の衛り神、朱雀が自ら伝令に来たということは、かなり切迫していると考えられる。

慎之介には、我那覇一族がそこまでの力を持っているとは思えない。

沖縄の片田舎の小さな忍者集団に過ぎない我那覇一族が、本土の中堅クラスである高千穂忍者に攻めかかれるものではない。

高千穂がその気になっていたら、今頃我那覇は全滅している。

ただ、すめらぎさくやが武人としてはひどく温厚で助かった。

数分後、高千穂神社踊場に霧隠慎之介・望月雅・月山宗幸・風磨小太郎の4人が現れ高千穂忍者は騒然としてしまった。

訝しげな顔で4人を見ている。

『皇朔耶殿は、おられるか。

 霧隠慎之介ご要望により推

 参つかまつった。

 望月雅・月山宗幸・風磨小

 太郎同道して参った。』

日本の4大忍者軍団の棟梁が勢揃いしている。

高千穂忍者達には、スーパースターのオンパレード。

皇朔耶は、まさか即応してもらえるとは、思っていなかったので大慌てで慎之介達の前にやってきた。

『あ・あ・ありがとうござい

 ます。

 皇朔耶でございます。』

その瞬間、慎之介の腕が動いた。

赤い光の矢が空を切り裂き、忍者服の曲者を打ち落とした。

我那覇の忍者服を着てはいるが、日本人ではない。

少し浅黒いが、欧州の血が混じっていると思われる。

『浅黒く日焼けしていれば、

 沖縄人と見間違うとでも思

 ったのか。

 えらくバカにされたもん

 だな。』

『お頭・・

 我那覇まで行きますか。』

月山宗幸の言葉に、慎之介は首をかしげていたが。

『みんな、ご苦労ですがお願

 いできますか。』

月山宗幸・風磨小太郎・望月雅は否やを言うはずもないのだが。

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