第143話

 それから3日後……ついに魔王城にて三国の主を招いた大規模な食事会が開催された。


 私とノノは魔王城の厨房でそのための料理とお菓子をひたすらに作り続けていた。


 今回の食事会はバイキング形式にすることにした。というのもコース料理を提供するのはそれはそれで簡単だが……どうも楽しさに欠ける。

 ならバイキング形式にすることで自分が気になった料理を好きなだけ取り分け、食べることができるから。その分色んな料理を見て回って選べるという楽しさがある。


 忙しくなく動き、一つ一つ料理を完成させていく最中、私はノノに声をかけた。


「ノノ、そっちは大丈夫そうか?」


「はいです!!」


 すぐ答える余裕があるってことは本当に大丈夫そうだな。例えば、内気でなかなか手伝ってほしいと言えない人とかは、そう答えるのに一瞬の間ができる。あっちにいた頃はそういうのを見極めて手伝ったりしていたのだが……ノノは問題なさそうだ。

 今日までの数日間……ずっと試作に没頭していたからな。もう作る手順は慣れたものなのだろう。


「さて、私の方もどんどん仕上げていくか。」


 ノノが手伝い無しで大丈夫ということを確認した私は、料理を作るペースを更に一段階上げる。

 そして完成した料理がどんどん台の上に並べられていく。


「ミノル様、こちらはもう会場の方に持っていってもよろしいのですかな?」


「大丈夫です。お願いします。」


「かしこまりました。」


 完成した料理をシグルドさんが次々と一人で会場へと運ぶ。一人とはいえ、彼は会場まで魔法で一瞬で到着してしまうからな。

 さっきまで台を埋め尽くすぐらい置いてあった料理も、もう残りわずかになっている。

 とんでもないマンパワーだな。


「良し、一先ずこれで料理は最後だ。後は、ノノの手伝いをしながらお菓子を作るか。」


 今日提供する料理を全て作り終えた私は、次にお菓子を作り始めた。色んな種類のケーキに、色んな果物を使ったタルト等々様々なお菓子をノノの前で作っていく。


 ノノは自分が提供するお菓子を作りながらも、私が作っているお菓子の工程を見逃さないようにじっと見ていた。


 これはまた近々ケーキとかタルトとか作って持ってきそうだな。

 私は心のなかで思わず苦笑いを浮かべてしまった。なんせ以前にシュークリームという前科があるからな。


「これで後は焼き上げるだけだな。……ノノ、私の方は終わったが、何か手伝おうか?」


「ふえっ!?もう終わったんですか?」


「あぁ、まぁな。事前に材料の計量とかはしてたから早かっただけだ。」


 流石に作る量が多かったからな。事前に作るものの材料とかは計量したり、ある程度切ったりして当日の手間を省いていた。

 お菓子に関しても繊細な計量とかを省いていたから、後は混ぜて焼くだけだったしな。


「あんなにたくさん料理を作って、お菓子まで作って……お師様凄すぎです。」


「これも慣れ……だ。こういう経験を何度かしていれば、いざ自分がやるってなったときにどうすれば早くできるのかわかるからな。」


 多分……もし次にノノが私と一緒にこういうバイキング形式の食事会の準備をするとなったら、手伝われるのは私の方かもしれないな。

 間違いなくノノは同じ轍を踏むことはないだろうし……な。


「で?何か手伝うことはないか?」


「大丈夫です!!後はプリンを型から外すだけなので……。」


「そうか、わかった。」


 じゃあプリンを型から外すのは任せて、盛り付け用の器とかを用意しておいてあげるか。


 暇だからな。


 ノノの裏で動いていると……


「あぅ~お師様~大丈夫って、言ったじゃないですか~!!」


「いや、あんまり暇だったもんでな。盛り付ける器位用意してあげようかと思ってな。……ほらほら、手が止まってるぞ?」


 ムスッとするノノに苦笑いしがら言った。


「あぅ……お師様意地悪です。」


 そう苦言しながらも、ノノは手際よくプリンを盛り付けていく。


「っとそうだ。私にもやることがあったな。」


 私はあることを思いだし、紙にペンで色々な言語で文字を書き始めた。

 これは今回招待したジュンコやアルマスにも簡単に、この料理がどんな名前で、どんな料理なのかをわかってもらうための物だ。


 料理名と……使った材料とを細かに書き記していく。特にアルマスにはこれがないと大変なことになりかねないからな。


「え~……っと?ノノが作ったのは、シュークリームにプリンと、色んな果物のジャムを使ったクッキーだったな。」


 しっかりとノノが作ったものにもこれを付ける。


「これで良し。」


 ちらりとノノの方を見てみると、最後のプリンを盛り付けて、それをシグルドさんが運んでいった。


「お疲れさん、頑張ったなノノ?」


「あ、お師様……お疲れ様でした!!」


「疲れたろ?座ってちょっと休んでおくといい。食事会の始まりまではまだちょっと時間があるからな。」


 料理が全て完成し次第シグルドさんとアベルがジュンコとアルマスを連れてくる手筈だからな。

 まだ少し時間はある。今は少しだけゆっくり休もう。

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