第96話
カミル達が風呂から上がって帰ってくるまでの間に、一人ちゃくちゃくとデザートの準備を進めていると……。
ドドドドド…………。
「ん?また地震か?」
何やら地鳴りのような、地震のような音が聞こえてきた。以前は確かマームがこの城の下に巣を作っているときに何度か地震が起きていたが……。
少し前に起きたことを思い出していると、その地鳴りのような音がなにやらどんどんこちらに近付いて来ているように感じた。
「……いや、これはまさか……。」
もしかして……と思い、厨房の入り口に視線を置いていると。
「戻ったのじゃ~!!甘味っ!!甘味はあるかの!?」
私の予想は当たった。あの地鳴りのような音はカミル達がここへと走ってきているときの足音だった。
「あ……あそこっ!!」
マームが指差した先には人数分並べられた、皆が待ち望んでいたデザート……アイスクリームがあった。
「甘味じゃあ~!!」
それを見つけるなり、カミル達はすぐさま席に着く。そして目の前に置かれたアイスクリームを目を輝かせながら見つめていた。
そしてカミル達の後に続いてアベルとノノが中に入ってくると、並べられたアイスクリームを見てニヤリと笑いながら私の方に歩み寄ってきた。
「やっぱりボクの思った通りだねっ。」
「あぁ、大当たりだ。……ところで石鹸の使い心地はどうだった?」
「あ~!!あれね?あれすごかったよ~。ほら見てボクの髪……サラッサラになったんだ~。」
そう言ってアベルが髪に手を通すと、彼女の言うとおりサラサラになっていることが見てとれる。
「肌もつるっつるのすっべすべだし~ねっ?良いことずくめだったよ。」
もちろんそういう風になっているのはアベルだけではない、カミル達もそうなっているはず……なのだが、今はデザートに釘付けになっていてそれどころではないらしい。
「お師様!!ノノの尻尾もふわふわになりました!!」
「そうか、良かったな。」
ゆらゆらと尻尾を揺らすノノの頭を撫でてみると、尻尾だけじゃなく頭についている耳までも触り心地がとてもよくなっている。
やばい、無限に触れる。
ずっと触っていたいという欲求をぐっと飲み込み、私はノノの頭から手を離して言った。
「さ、カミル達と一緒にお菓子を食べてくるといい。溶ける前にな。」
「ありがとうございますお師様!!」
「ボクも食べよ~っと。」
ノノ達も席に着くと、それを待ちわびていたようにカミルはスプーンを手に取った。
「皆席についたようじゃし……いただくのじゃ~!!」
そしてカミルはスプーンでアイスクリームをごっそりと掬い取る。
「あ、食べるときは少しずつ…………。」
注意した時には時すでに遅く……カミルは口いっぱいにアイスクリームを頬張ってしまっていた。間に合わなかったか……。
「ん~~~っ、冷たいのが口のなかで蕩けて甘……い゛っ!?」
口に入れてから少しの間は甘く蕩けるアイスクリームに舌鼓を打っていたカミルだったがある拍子に表情が固まった。
「むぅ~~っ!!あ、頭がキーンとするのじゃ~っ!?ぬぐぐぐぐ…………。」
頭を抱えてカミルはのたうち回る。やはり龍でも突然冷たいものを食べたときに頭がキーンとなるらしい。
カミルのそんな姿を見て、となりに座るヴェル達は恐る恐る問いかけてきた。
「み、ミノル?カミルどうしちゃったの?」
「ただ冷たいものをたくさん口に含んだから頭が痛くなってるだけだ。こうなりたくなかったら少しずつ食べるんだぞ?」
「肝に命じておくわ……ちょっと気になるけど。」
最後の方何を言ったのか声が小さくて聞き取れなかったが……まぁ大丈夫だろう。
「おーいカミル?大丈夫か?」
「ぬぐぐぐぐ……美味しいのに頭が痛いのじゃ~。」
「これに懲りたら少しずつ食べるんだぞ?わかったな?」
「なんとも悪魔的な甘味なのじゃ~。」
さすがに懲りたのかカミルは治った後、少しずつ食べていた。
「ん~……でもあれだね。これを食べるとミノルがさっき言ってた理由が良くわかるかも。」
アベルがアイスクリームを食べているときにふとそう呟いた。
「これは確かに今食べた方が美味しく感じると思う。多分あれだよね?昨日飲んだ蜂蜜牛乳だっけ?あれとおんなじ原理だよね。」
「そういうことだ。」
まぁ普通に食べても美味しいんだけどな。でも体がぽかぽかになっている時に食べると、より一層冷たさとかを感じることができるから……美味しく感じるんだ。
その分一部弊害もあるんだが……それはさっきカミルが嫌というほど味わっているのを皆は見てるからな。もうそんなことにはならないだろう。
そう思っていた時だった……。
「あぅぅぅ~……頭がキンキンします~。」
ノノが頭を押さえてうずくまる。どうやら少し欲張ってしまったらしい。
「あらあら、ノノ大丈夫?」
「あぅ~……。痛いです~。」
その後結局皆アイスクリームによって頭がキーンとなりながらも、風呂上がりの冷たいデザートを楽しんだのだった。
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