第四龍礁テイマーズテイル

Shiromfly

序説『アラウスベリア』

序説1項「寓話『わかものとりゅう』」

 とおとおむかしとおとお場所ばしょに、一匹いっぴきのりゅう、がんでいました。

 りゅうは、とてもよく景色けしきえるおかうえらし、何日なんにち何年なんねんも、そらあおく、あかく、くろく、まることをながめていました。


 ある、りゅうのらしている丘のしたに、たくさんの人々ひとびとあつまってきました。

「おや、なんだろう、あのちいさないきものたちは。ふしぎないろをしているなあ」

 気付きづいたりゅうは興味きょうみしんしんで、人間にんげんたちを見下みおろします。


 やがて、人々ひとびとおかうえにりゅうがらしていることをると、次々つぎつぎはなしをせがみにいきました。


 りゅうは色々いろいろはなし人々ひとびとにしてあげました。

 人々ひとびとはりゅうのはなしを、とてもたのしんできました。

 そのとき人間にんげんたちはとてもよわく、りゅうとたたかおうなどとはかんがえもしなかったのです。


 あるむららす一人ひとりおんな病気びょうきになってしまい、こまってしまったおとこがりゅうになおしてほしいとおねがいしにいきました。


 りゅうはいました。

「かわいそうだけど、ぼくはちからになってあげることはできないよ」


 おとこはりゅうにいかけます。

「どうしてですか」


 りゅうはこたえました。

「なぜなら、そのこのびょうきをなおすほうほうは、ぼくのしんぞうをとりだして、すりつぶしたものをのむことだけだから」


 おとこはいらいらして、言葉ことばつづけます。

「では、そうしてください」


 りゅうはおどろきました。

「じょうだんじゃあない。そんなことをしたら、ぼくはしんでしまう。しんでしまうことをあなたはできますか?」


 おとこいました。

「わたしのかわいいむすめがしにそうなんだ!」


 それだけ言うと、おとこむらかえしました。


 おとこむら一番偉いちばんえらひとでした。あくる、たくさんの男達おとこたちがりゅうのらすおかのぼってきました。

 人間にんげんたちはおとこ命令めいれいで、りゅうをころしにやってきたのです。


 りゅうはころされてしまい、心臓しんぞうをすりつぶしたものをんだおんなはたちまち元気げんきになりました。


 おなかいた村人むらびとたちはりゅうをべ、かわ武器ぶき防具ぼうぐつくりました。


 やったぞ、ずるい りゅうを やっつけたぞ。


 やったぞ。ずるい りゅうを たべてやったぞ。


 


 

 こうして人間は、龍、という生き物が、とても自分たちの役に立つ生き物だという事を知りました。

 龍をやっつけることは、自分たちを豊かにする事だと気付いたのです。


 龍を殺した人々は、龍は悪い奴だ、悪い奴だ、と、ことさらに言いふらしました。

 他の場所にも龍が住んでいることを知った人間たちは、龍を殺して作った武器や防具を使い、悪いことをしていない龍も、悪い奴だ、と言って次々と殺してしまいます。


 生き残った龍達はとても嘆き、悲しみました。人間と戦って、滅ぼしてしまえ、という者も居ました。


 悩んだ龍の王様は、神様に相談をしに行きました。


 龍の王様の話を聞いた神様は言いました。

「そうか。では、お前たちを酷い目に合わせた人間達が同じ目に遭うようにしよう」


「そして、君たちには安心して暮らせる場所を教えてあげよう。皆で一緒に行きなさい」


「わかりました、ありがとうございます」


 龍たちは住処を離れ、人々から遠く離れた場所へと飛び立ちます。


 龍が居なくなったのを知った人間たちはとても困りました。

 しかし人間たちは、他の生き物や、木々、海、川……

 あらゆる自然の中から同じ力を得られる事に気付きます。


 こうして人間達は、強い力を手に入れました。


 こうして人間達は、豊かさを求めて人間同士で殺しあう呪いをかけられてしまったのです。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る