11。SF×探偵もので400字

「犯人はこの中にいる!」

 眼鏡の男はそう言い放って、壁に向かって指を指した。私はそれを見て残念な感情が湧き上がり、なるほど、これが哀れみというものかとひとつ賢くなった。

「チッチ、違うのさワトソン君。私が見たのは彼らの顔ではない。靴さ!」

 彼の視線が動いたのに合わせて、私も斜め下を見下ろす。

「ほら、よく見たまえ。左の女性はヒール、隣の男性はサンダル、新品のランニングシューズ、厚底ブーツ、そして……土のついたスニーカー!逃走時犯人は窓から庭へ飛び降り、公衆トイレで服を着替えたが、靴だけは替えがなかったことはすでに証明済だ。よって犯人は……東城さん、あなただ!」

 言い放つや否や、彼はその場に崩れ落ちた。私はそれが演技ではないことを確認して、彼の眼鏡を奪い、傷がないかと光に当てた。

 まったく、人というのは何を考えているのかわからない。理想の自分を見終えて眠りこける男は、探偵らしさなどどこにもなかった。

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