11。SF×探偵もので400字
「犯人はこの中にいる!」
眼鏡の男はそう言い放って、壁に向かって指を指した。私はそれを見て残念な感情が湧き上がり、なるほど、これが哀れみというものかとひとつ賢くなった。
「チッチ、違うのさワトソン君。私が見たのは彼らの顔ではない。靴さ!」
彼の視線が動いたのに合わせて、私も斜め下を見下ろす。
「ほら、よく見たまえ。左の女性はヒール、隣の男性はサンダル、新品のランニングシューズ、厚底ブーツ、そして……土のついたスニーカー!逃走時犯人は窓から庭へ飛び降り、公衆トイレで服を着替えたが、靴だけは替えがなかったことはすでに証明済だ。よって犯人は……東城さん、あなただ!」
言い放つや否や、彼はその場に崩れ落ちた。私はそれが演技ではないことを確認して、彼の眼鏡を奪い、傷がないかと光に当てた。
まったく、人というのは何を考えているのかわからない。理想の自分を見終えて眠りこける男は、探偵らしさなどどこにもなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます