第2話 - 存続 -
-翌日、昼休み-
「え」
茉莉とハナが机を挟んで弁当を食べる最中、不意にギャル3人が机を囲んできた。
3人ともしかめっ面で腕を組んで
「あ、あの、何か……?」
箸を持ったまま固まって横を見上げる茉莉、何事も無かったかのように食を進める、ハナ。
茉莉から見ると3人とも10cmほども大きい。しかも金髪に茶髪でドハデ、クラスに他数名いるギャルの中の代表格でほとんど話したこともない。なんだが怖くなって
バシッ パサッ
急に紙を机に叩きつけられ、思わず茉莉はビックリして顔を腕で覆いそうになる。出された紙は、バスケ部、入部届けだった。
「水津野さんてバスケ部だっけか?」
「茉莉さんて言うんだー」「じゃあマツリンね」
「え、これ、どういう……」
「入部希望者よ。5人そろった。じゃあ部活継続で」
対面に座り、変わらぬ表情で淡々と弁当を食べ続けていたハナが解説した。解説になっていないがそういうことらしい。
「じゃ、よろしくキャップー」「あっはっは!」
言うと手をひらひらさせて戻っていく。どうみてもバスケットボールをやる
「ん、ちゃんとバスケやらせるから」
ハナは普段通りだが、にわかに信じられない。しかしこの3人が、後にチームの勝利に大きな影響を与えることを、茉莉はまだ知らない。
▼
放課後、ハナと2人で職員室へ行く。顧問の
「えー、せっかく楽できると思ったのにー、まだやるのー?」
いきなり顧問らしくないセリフが飛び出した。親しみやすく、男女問わず人気のある先生だ。はいはい分かりましたと投げやりの返事をされる。おそらく部活にはほとんど顔を出さないだろう。これまでもそうだった。
「先生、いきなりですみません。練習試合を組んでいただけませんか」
「えー」「えぇ!?」
違うトーンの返事が2つ繰り出される。茉莉はさすがにありえないと思った。ピッタリ5人しかいない上に、その内3人は得体のよく分からないギャルだ。当日試合に来るかどうかも怪しい。いやそれ以前に練習に来るのかも怪しい。
「んー、急だと私の親しい先生のとこしか、申し込めないよー?」
「それで構いません」
ハナが一礼してその場を去っていく。慌てて茉莉も動作を同じくし、職員室を出た。
「ちょ、ちょっと! ハナちゃん、大丈夫なの!?」
廊下に出るなりハナに問い詰める。
「まあね。私は、将来のためだし、あの3人もね」
スッっと体ごと振りかえり、茉莉を見据えた。
「茉莉、真一さんに追いつきたいんでしょ? 一番がんばるのは、あなたよ?」
!
言うとまたスタスタ歩いて行った。今日から体育館に行くようだ。
――兄さんに、追いつく……。それは私のささやかな願いだったけど……。
しばし立ち止まって考えたが、慌ててすぐに後を追った。
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