第2話

 普通の日常。普通の風景。


 いつもの通学路と、いつもの学校。


 普通の授業。真ん中よりちょっと下ぐらいの成績。


 たぶん、これから先も、こんな感じ。


「今日さ、好きピとデートすんの」


「いいなあ。早く次の彼氏作りてえ」


 両サイドで交わされる会話。


「どこ行けばいいかな?」


 話を振られる。


 行き先を決めてないのに会うことだけ決めるなんて。ばからしい。


「遊園地」


 本音をなんとなく打ち消して、それっぽい答えを出す。


「遊園地。いいねえ。誘ってみよ」


「買奈に相談するのが一番よね、やっぱり」


 両サイド。謎の感心。


 どうでもいい。


「買奈は?」


「彼氏とか、できんの?」


「女子高でどうやって彼氏作んのよ」


 両サイド。黙る。


 漫画やアニメのようには、いかない。女子高ではクラスのほとんどが他校の生徒と付き合っている。最近ありがちな女の子同士とかのどうでもいい恋愛も、存在しない。


 ただただドライな、女性になりきれない女子の集まり。それが、女子高。ここは漫画やアニメじゃない。誰も他人に依存しないし、頼ったりもしない。だから、いじわるしたりもしないし、べつだん仲良くもならない。


 恋人がいることを簡単に隠せるのが、唯一、女子高の利点だった。


 彼は、共学。こことは、違う環境にいる。


 私ではない誰かと付き合うなら、それはそれで、よかった。嫉妬もしないし、束縛しようとも思わない。ただ単に、自分がその程度の女だった、というだけ。


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