春と秋

秋風が春に吹き込んできた

今年の夏は、去年の暑さが祟って、夏バテだって

春と秋は知らぬうちにタンゴを踊る

喧嘩しているつもりでも、

夏や冬のように厳しく当たれない


桜が秋の初風で散り、その上に紅葉が降りかかる

赤や黄色を抱き留める桃色は、

初めて乳呑み子を抱いたように、

おっかなびっくりしていたよ


鯉のぼりが鮭おろしに吹かれて、

尾ひれをはためかせていた

こんな追い風は初めてと

おい勇み、念願の成就に目を輝かせた


春と秋

こんなに早く打ち解け合えたのは、

共通の友人からよく話を聞いていたから

こんなに楽しいけれど、直に会えるのはこれが最初で最後


厳しい冬がやってくる


はずなのに、なかなか冬はやってこない

すると、野原にほんの僅かに霜が降り

霜で書かれた便りが届いた


今年の冬は、去年の寒さが祟って、風邪を引いたらしい


もう少しだけ一緒にいれるみたい

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る