かすれた声でグラシアス

あぐらをかいてウェルカムドリンク一気飲み

冬なのに

それも真冬なのに

喉だって渇いていないはずなのに


柔和な笑顔に貼り付いた、白い目

センテンスの入れ替えで巧妙に

隠された、嫌味

言葉じりにちらつくのは含み笑いの影


おかわりのすすめ

やんわりと断れど

そうはいかぬと早業で

目の前に置かれる、二杯目のドリンク


ひと口舐めたはずが

手には空のグラスが握られていた

二杯目も一気飲み

さっき一杯飲んだのに

喉だって渇いていないはずなのに


上品な誉め言葉に込められた、人間性が笑ってる

巧妙さを捨て、誉めそやされる

殺される、みね打ちで殺される


これではいけぬと、私はトイレに逃げ込んだ

頭を抱え精神を落ち着け

心の中で唱える

私は水飲み鳥ではなく、人間なのだと


トイレから帰り、己の目を疑う

眼前に広がるのは塩気の利いた、おせんべい

私のつまらぬおみやげ

それに三杯目のドリンク

そして中央にそびえる、巨大な水差し


礼儀を重んじる人間と

逃げずに座るアホウドリ

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