赤い毛玉

春は眠って

夏は解け

ようやく訪れた

まっさらな秋


真っ赤なスカーフを首に巻いて

見頃だよって合図を送る


美術館もいいけれど

たまには透明な額縁持って

森に出かけよう


赤い絨毯下ろし立て

まち針なんて落ちてないよね

風で模様は変幻自在


赤い毛玉が転がっていく

無邪気に追うのは

まだ縫いかけの子猫


縫いかけのセーターの

胸の真ん中は

まだ空洞で

前衛家ですら

投げ出すかもしれない


子猫は駆けるよ、どこまでも

だって、まるい形が好きだから

そして、それが逃げていくなら尚のこと


もし恋が風に吹かれたら

このスカーフも飛ばすまで

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る