サイダーの宝石

あの日、君は砂浜で、小さなお城を作っていたね。

瓶が削れてできた、

サファイア色のガラス石をはめ込んで、

窓の代わりにしていたね。


ガラス瓶を見ると、いつもあの

サファイアのお城を思い出す。


そんなわけはないけれど。

まだあの城は崩れずに残っているんじゃないか、

なんて思えてくる。


君がくれた貝殻を耳に当てると、

あの日の波の音が聞こえるよ。

思い浮かぶ風景は、

実際の砂浜よりも煌めいているくらいで。

なのに君には、陽の光が少しも当たっていない。

周りすべての影が、君の方を向いていた。


あれからもう海には行っていない。

思い出の中の、君や、お城や、砂浜は、

ふと気を抜くと、砂に流れてしまいそう。


ここはこんな山間部だけど、

君を思い出すと、

丘の向こうに海が見える気がするよ。

君は、大きなお城の窓辺に座って、海や空を眺めながら、

サイダーを飲んでいるのかな。

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