首筋

宵闇よいやみだというのに

私たちは誰も

太陽を持ってこなかった


だから私たちの一人が

満月まんげつをパキンと割って

三日月みかづきともらせた


嫉妬しっとしてしまうほど綺麗きれい

あの子の手のひらの上で

三日月はうすく笑っていた

私たちは、一人残らず笑われて

あた一面いちめんすべて笑われて


寒気さむけがして

顔をあげると

思いをせる彼の首筋くびすじ

月の光に照らされて

はずかしめられていた


それを見て私は

あろうことか全身を

粟立あわだたせてしまった

私の視線は、彼の首にくぎづけで

私の心臓は、何もかもを鼓動こどうさせていた


風になびく草木も

かわいたあぜ道も

笑いかける灯火ともしび

こんなにひらけた夜空さえもが

音を立ててみゃくっている

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