第7話 オリヴィエートからローマへ

 朝食の時、みっちゃん姉妹の傍に座りました。

ソックスのお礼を言って、

「夕食もご一緒すればよかったですねえと、昨日行ったところ美味しかったですよ、夕食どうされました?」

 「疲れちゃったし、昨晩は外でパンを買ってきて食べたのよ。」とみっちゃん。

「このホテルは 電気大丈夫だったし!」


そういえば、ヴェニスでの真っ暗闇のホテル、お気の毒でした。 


ローマに向かう途中で オリヴィエートという所に向けて出発。


バスに乗りこむ前にもう一度トイレに行っておこうと思ったとたん

 

「イヤー 結婚式感動しましたわ!。」と山田さんのお偉いご主人が話しかけてきました。そうそう、こちらも結婚式でした。

「お嬢様 おめでとうございます。」

「写真、ほら見てください」とデジカメを渡される。


 ステンドグラスが美しい教会で、丁度日本の雑誌の特集記事の撮影もしていたそうです。


 花嫁花婿は結婚衣裳のまま 協会からパーティー会場まで歩いていったんですって。

通りの方々がみなさん祝ってくれて 良かったですよーって。

 

デジカメの画面にはフィレンツエの街並に 真っ白なウエディングドレスが確かに美しく映えていました。ちゃんと白いヴェールも風になびいてました。セーフだったんですね。

田中さんご家族のぎりぎりセーフのなんと多いこと。


そうこうしているうちに出発時間になりバスに乗り込みました。


 バスは、途中ミケランジェロ広場にほんの10分ほど立ち寄り、その後

中世の城塞の町オリヴィエートの大聖堂を見学してからローマへと向かいます。


 ミケランジェロ広場からはフィレンツエの街が一望に見渡せます。眼下にアルノ川。

街の中心部からこの高台までバスだと迂回して上がってきますが、ヴェッキオ橋から垂直に登ってくれば、充分歩いてこれる距離です。


中心にはダヴィデ像のコピーが。実物を拝むことはできませんでしたが、シニョーリ広場とここと結局2体のコピーを見ることはできました。


フィレンツエ、絶対また来る! としみじみと街を眺めていたものです。


 気が付くと周りに誰もいません。

振り返るとバスの入り口でふーこさんが手を振ってます。

慌てて戻ると、添乗員Sさんが「しょうがないなあ。。。」 というお顔をしてらっしゃいました。

バスはすぐに出発しました。10分たってないけどなあ。。。


バスはほとんど何も見えない霧の中でもスピードを落とさず走る。

「イタリアの方はみなさん運転の天才なのでね、だいじょうぶですよ、安心してください」とSさんが言ったが、ほんと、こんな天気でも乗用車がびゅんびゅん飛ばして行く。


オリヴィエートまで眠ろうとしたけど、初めさざなみのようにふと感じた「行きたい感じ」がだんだんと強くなってきて、

「ホテルで田中さんの結婚式の話が始まっちゃったじゃない? 行きそびれてしまったわ。」

というと


「ミケランジェロ広場が寒かったから、冷えたのよ。」とふーこさん。

そっか、寒くてみなさん早々とバスに戻ってたのね。今頃気付く私。


あー、ホテルで行っておけばよかった。

休憩の標識を見るたびに(イタリアの高速道路はインターが少ないんですって)Sさんのとこに行ってバスを止めてもらおうかと考えては思いとどまることの繰り返し。

添乗員Sさんに これ以上面倒をもちこむことはできません。

オリヴィエートの手前のインターでトイレ休憩とSさんが言ったときはほっとしました。


コインを用意して 真っ先にバスを降りました。 添乗員さんふたりも足早に駆け込みます。彼女たちの行動はすばやいですね。何人も率いているので、トイレ問題は最重要課題だということです。西洋人に比べて日本人はトイレの回数が多いそうですね。

「西洋人は容量がたっぷりあるのかもね。」


後から思えば、Sさんもがまんできなくなって寄ったんじゃないの?と勘ぐってしまいました。

だって、発車したと思ったらすぐにオリヴィエートのケーブルの駅に着きましたもの。

丘の上の街なので、ここからケーブルカーに乗ります。

バスを降りたら寒い寒い。昨日は暑いくらいだったので、薄着をしてしまっています。


日本を出る前に旅行中寒い思いをしないようにと暖かい格好を揃えてきたのに。

肝心の今日に限って、ストールも手袋もほっかいろもスーツケースの中。

スーツケースはバスの荷物置き場。  ばかだね、わたしゃ。


 ケーブルカーで降りたところは標高126m、そこからまたミニバスでドゥォーモ広場まで登ります。ドゥォーモのあるところまで標高352m、オリヴィエートで唯一平なところがこの広場ですって。

 ずいぶん高いところに作ったのですね。

イタリアは、丘の上の集落が多いようです。

 ゴシック建築のこの教会のファザードも美しかったです。色鮮やかなモザイクで旧約聖書が描かれています。

 霧が深く、ドゥォーモの上部は見えなくて残念でしたが、神秘的な教会でした。

 教会の中に入るとふわっと暖かくほっとしました。

 

 15分ほど、街を自由に散策してくださいということでしたが、街中に行くよりこの教会をゆっくり見たかったので、みなさんやふーこさんとも別行動で、ひとりでゆっくりと教会の中におりました。

外が寒かったからというのもありますが、この教会は心がとても落ち着いて静かにここにいたかったのです。


 そのうちに、聖歌隊の美しい声が聞こえてきました。礼拝堂の奥にきっと練習する場所があるにちがいありません。


 美しいコーラスと壁画とに包まれて、特別な時間が流れています。教会とはそのように感じることにできる場所。 大いなる存在を感じ、自分を俯瞰して眺める目をその存在に同化させます。

 すると、どうしても物事を自分中心に捉えていることに思い当たるし、でも、それはもう人間どうしようもないことで、それだからこそ、人はひとりで生きてるしひとりで死んでいくんだなあと、なんだかわけわからないことを思ったりします。

 このまま、ずっとここに座っていたいと教会の椅子に身は預け、心は軽く浮遊している気分。

  教会はいつも平穏をくれます。


ほどなく、ツアーの面々が帰ってきました。

また、バスでケーブルの駅に戻ります。城塞の縁りから下を覗くと絶壁。

絶壁の上にほんの2キロ四方くらいの街、オリヴィエート。

ワインでも有名なオリヴィエート、ほんのかすめ通っただけでなんにも見ていないに等しいけど、印象に残りました。


バスに戻り いざローマへ。あと2時間もかからないでしょう。


そういえば黙りがちだったふーこさんが、「10ユーロって赤いよねえ?」と聞くので 

「うん、赤」と応えた。彼女「ふーん」と後は黙っている。

どうしたのかな。


彼女、美しい模様のサラダサーバーを買ってきてた。オリヴィエートの町は風情があって可愛らしかったそうです。


 ローマ中心部に近づくにつれ 車が多くなってきた。

バイクもたくさん走っている。

とうとう渋滞の中に入ってしまいました。

でも、もうあと少し。

バスはゆっくりと、ヴィスコンティ・パレス・ホテルにちかづいて行きます。


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