【4章完結】魔王になるには早すぎる!
@サブまる
第1話 死ぬ理由にはダサすぎる
体が
「ようやく気づいたようですね。初めまして
気づくと、アニメで見たような神界っぽいところにいた。
俺はと言うと、お互いに向かい合って木の椅子に座っている。
テンプレであれば死んだ後に、神々しい女神が現れて俺を異世界へと転生させ、チートを
目の前の女性が言っていたが、俺が死んだというのは間違いないようだ。
不思議と恐怖心はなかった。
この女性に対してもだ。
と言うのも、現実ではありえないほどに整った顔つき、そしてスタイル、さらに格好。
それとなんだろうか。男であれば誰しも見惚れてしまうような、そんな魅力を
つか、待って。最後なんつった?
「………乙であります?」
「えぇ、乙であります」
白い部屋とは対照的に、黒い装束を
黒い装束……そういえば聞こえはいいが実際に黒いのは体の面積の3割ほどで、あとの7割は白い肌が面積を占めていた。世間で言えば露出狂……いや、そんな次元はとうに超えている。
こいつ女神様と言うよりサキュバスじゃね……?
「……俺の記憶が正しければその言葉は死人に向けるような言葉じゃないと思うんですが……それはいいとして質問してもいいですか?」
目の前の得体の知れない女性が感情の読み取れない表情でコクリとうなずいた。
「なんでしょう?」
「死ぬ寸前の記憶がなくてなんで死んだかわかんないんですけど、俺ってなんで死んだんですかね?」
俺の言葉に急に笑いを堪えるような顔をして、声をして、
「あなたは、ビルの屋上で、自殺する!!と言ってしたに飛び降りようとした少女を助けようとして、」
そうか……俺は人を助けて死んだのか……誇れるものが何もなかった俺だったが、最後は人の役に立って死ねたんなら本望だ。
「助けようとして、とっさに走り出したあなたは……ププ」
何笑ってんだこの女……!!
「その少女を庇って、勢いあまり、落ちたって訳ですか……」
「いいえ? 勢いよく走り出したあなたは、一歩目で右足を肉離れ、二歩目で左足を肉離れ、その後なんとか少女の元へたどりついたはいいものの、そのままコケて……ププ」
いちいち腹立つな…一気に言えよ……いちいち語尾で笑いやがって。
「転落死……て訳ですか」
「正確に言えば違います。ビルの上でコケ、落ちたら死ぬと言う恐怖で心臓が止まったのです。撮影を邪魔した挙句にビルを丸ごと事故物件にできるなんて大したものですよ……ププ。こんな記憶残しておけないから消してあげたんですよ?感謝してください。なので死んだ理由は言えませんね……プププ」
「……は?撮影…?」
つかもう全部言ってんだよ……
「ええ、ドラマの撮影です。そこに自ら野次馬として出向いたあなた撮影だと知っていた。く・せ・に!!やっちゃった訳ですよ」
「なああああ!やめろおおおおおお!!!!!」
「続きを聞きたいですか?死んだその後のあなたの扱われ方を。ププ」
「やめろおおおお!!!!!!!聞きたくない聞きたくない聞きたくない!!!!!!!!」
俺の様子を見て目の前の女が今まで
「いじめるのはこのくらいにしておきますね」
吹き出しながら、
「プッ。死なれると困るので……プププ」
死ねるもんなら死にてえよ……つかもういっそのこと殺して楽にしてくれよ……なんだこいつ。わざわざ記憶を消してまで隠していたことをあっさりバラして俺の羞恥心を限界突破させてくるし、ぜってぇ女神じゃねえよ……
「さて、本題に入りますね」
さらっと流されるのには不満を感じたが、早く異世界転生してこいつから離れたいと思ったので黙る。
「死んでしまったあなたですが生き返ることができます」
キタキタ!!脳裏に浮かんだ異世界転生と言う言葉にこれまでの羞恥が吹っ飛んだ。
「異世界ですか!」
俺が食い気味に席から立ち上がると、引き気味に、
「なんですか気持ち悪い。これだからオタクは」
イラッ。確かにオタクだったがなんだよ。
「まぁそうです。あなたのいたところとは別の世界、つまるとこ異世界であなたは生き返る訳ですが、あんまり期待しないようにね?チートとかないから」
急にタメ口……!!つかチートがない異世界って……そんなのただの拷問じゃねえか。生き返ったところで初心者狩りにあって死ぬわ。
「拒否権は……?」
「ある訳ないじゃない?ププ」
何こいつまじでいちいち腹立つんだが……!!
「てなわけで、あなたにはそこに行ってできるだけ早く魔王になってもらいます。」
「ま…おう……?なんでまた俺が魔王なんかに……普通異世界転生と言ったら勇者とかスライムとかクモとか……」
そしたら、言うと思ったー的な顔をして俺を笑いやがった。くそ……!!
「近々その世界では勇者が誕生するわ。でも、魔王がいないの。ほら勇者って魔王倒すのが仕事みたいなとこあるじゃない?てことわよ、勇者が生まれても魔王がいなかったらその勇者ニートになっちゃうじゃない?」
ニートにはならんと思うが……つまりは俺が魔王になって殺されろってことなのか…?
「で、私たちも同盟をむすんでるわけなのよ、人間の女神と。勇者が誕生したら魔王を誕生させろって内容のね。その内容を詳しく話すと長くなるから省くんだけど、端的に言えば納期までに魔王を作んないといけないんだけど……うまくできなくて。恥ずかしい死に方をしたあなたを選んだってわけ」
話のつながりも言ってることもさっぱりわからん。
「つまりは俺にもう一度死ねと……?」
慎重な顔でそう言うとこの女は不謹慎にもゲッツのポーズをしながら
「そっ!あんた意外と物分かりいいのね!」
そっ!
……じゃねえ!!!冗談じゃねえよ!!
「なんで俺がそんなこと……!!」
「はいはいもううるさいからいったいった」
そう言うと部屋が激しい光を放ち、俺の足元に魔法陣が浮かんだ。間違いない。俺の知識がそう言っている。どっかに飛ばされるやつだ。
「ちょちょっっ!!まだいろいろ……!!!ちょっと待てぇぇええええ!!!!!!」
「大丈夫よ。言葉も通じるし、あっちの文字だって読める。なんなら魔法も使えるわ。オタクだから魔法の知識はあるでしょ?どうせ家で大声で技名叫びながら周りが見れば死にたくなるような恥ずかしいポーズ決めてた口でしょ?あと訓練すればそれに応じて身体能力も上がるし……まぁ、てなわけだから、頑張って魔王になってね!応援してるからっ!アディオス!あ、あんたが死んだ時の記憶はこっちでとってあるから、下手な真似したら延々とその記憶の中で夢を見続ける呪いかけるから」
そう言ってこの目の前の得体の知れない女は俺にニコッと笑って見せた。
「頑張って!オ・タ・ク」
「このくそあまぁぁあああああ!!!!!!!」
「はははっはははっははは!!!今日は酒が美味いわー!!!!」
過呼吸になりながら笑い転げる得体の知れない女の姿を最後に、俺は白い光に包まれ、その部屋ではないどこかに飛ばされた。
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