ビードロに金魚およぎて雲のみね

【読み】

 ビードロにきんぎよおよぎてくものみね


【季語】

 ビードロ・金魚・雲のみね(雲の峰)〈夏〉


【語釈】

 ビードロ――①ガラスの別名。また、ガラス製の器具。室町末期、長崎に来たオランダ人が製法を伝え、初めは、酒杯・鉢・瓶などの小さな道具だけが作られた。②玩具の一種。ガラスでできた首の長いフラスコ状のもの。吹くとぽぴんぽぴんという音がする。ぽぴん。③(「すきとおるように美しい」というところから)美人、美女の形容。④(ガラスの玉を使ったところから)眼鏡。⑤「ビードロよま」のこと。[参考:精選版 日本国語大辞典]


【大意】

 ガラスの鉢(あるいは水槽)に金魚がおよいで、空には入道雲が浮かぶのであった。


【附記】

 月とすっぽんではないが、微小なものと巨大なものの対比である。


【例句】

 雲の峰幾つ崩て月の山 芭蕉

 雲の峯秋たつ岡と成にけり 露川ろせん

 海山を父母にして雲の峰 亀洞

 つばくろのとり付立つきたつや雲の峯 吾仲ごちゅう

 解捨て帯せぬ山や雲の峰 存義ぞんぎ

 揚州の津も見えそめて雲の峯 蕪村

 廿日路はつかぢの背中にたつや雲の峰 同

 雲の峰にひぢする酒呑童子しゆてんどうじかな 同

 立枯の木に蝉なきて雲のみね 同

 尚暑し雲の峯たつ江戸の町 嘯山しょうざん

 うしとらのことに恐し雲の峯 召波しょうは

 龍の落し畑見にゆくや雲の峯 几董きとう

 葬礼の田中をゆくや雲の峯 道彦みちひこ

 しづかさや湖水の底の雲のみね 一茶

 蟻の道雲の峰よりつづきけん 同

 大鯛も生簀いけすにやせて雲の峰 鶯居おうきょ

 うをの寄る藻の下かげや雲の峰 井月せいげつ

 雲の峰風なき海を渡りけり 夏目漱石

 雲の峰雷を封じてそびえけり 同

 虚無僧の二人つれだつ雲の峰 泉鏡花


 硝子ビードロの魚おどろきぬけさの秋風 蕪村

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