秋の夜の書やめがねの置きどころ

【読み】

 あきのよのふみやめがねのおきどころ


【季語】

 秋の夜〈秋〉


【語釈】

 ふみ(文/書)――①文字を書いたもの。㋐手紙。書状。㋑書物。ほん。㋒書類。文書。②学問。特に、漢学。 ③漢詩。 [参考:大辞林 第三版]


【大意】

 秋の夜の、めがねの置き場所になる書物である。


【附記】

 秋の夜長は読書に最適であろう。平らかな本は物を置くのにちょうどよい。


【例歌】

 すむ人もなき山里の秋の夜は月の光もさびしかりけり 藤原範永

 秋の夜は雲地をわくるかりがねのあとかたもなく物ぞかなしき 藤原定家

 秋の夜は長しと言へどさす竹の君と語ればおもほえなくに 良寛

 注ぎたれば油壼なる油尽くものあぢきなき秋の夜半かな 与謝野晶子

 白玉の歯にしみとほる秋の夜の酒はしづかに飲むべかりけり 若山牧水


【例句】

 秋の夜を思へば古き我身かな 智月ちげつ

 秋の夜やおかしき声の家つづき 乙訓おとくに

 あきの夜や自問自答の気のよわり 太祇たいぎ

 甲賀衆かふがしゆのしのびの賭や夜半よはの秋 蕪村

 枕上まくらがみ秋の夜をる刀かな 同

 子鼠のちちよと啼くや夜半の秋 同

 秋の夜をあはれ田守のつづみかな 召波しょうは

 秋の夜や時雨しぐるる山の鹿の声 樗良ちょら

 あきの夜やそろりと覗く君が門 暁台きょうたい

 逢坂あふさかの町や針研ぐ夜半の秋 几董きとう

 妓王寺へ六波羅の鐘や夜半の秋 同

 秋の夜や壁にかけたる泣面 士朗しろう

 秋の夜や隣を始しらぬ人 一茶

 秋の夜やしやうじの穴が笛を吹く 同

 簾をもる星の光りや夜半の秋 羅蘇山人らそさんじん

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