第13話

久しぶりの登校だからもしかしたら俺が教室入るとみんなが心配してくれてるかも…と絶望的な期待も虚しくなにひとつ変わらない教室だった。知ってたけどね?怪我して人気者になれるの小学生までだからね??と言い訳しながら席につく。「おはよう。」と俺の大好きな声。東条…!隣から声が聞こえると俺は少し安心した。彼女といるとやっぱり落ち着くな…彼女と会うのは以前の土砂降りの日以来だ。こまめに連絡はとってはいたがどれも中身がない話だった為、なにを話せばいいか分からなくなっていた。すると彼女は「今日時間ある?」と聞いてきた。「いつもの喫茶店に行く時間ならあるよ」と答えると彼女は「そう…」とだけ答えると難しそうな本を読みはじめた。すると突然 あぁ、なんだか眠いな…と感じ落ちる様に今日の授業も以前同様、睡眠学習をした。目が覚めると授業は終わっていて「やっと起きた…」と呆れた声。ていうか昼にすら起きないとかありえるか??いや待てよ、俺にも昼だと言って起こしてくれる友達がいれば多少は変わったのか??そんなあり得ないイフの話を妄想していると「行こ。」と俺の自慢の彼女が急かしてくれたので喫茶店に向かうことになった。いつもの席につき俺と東条はアイスコーヒーを頼んだ。アイスコーヒーを待っていると東条は「なにがあったの」と真剣な目でこっちを見た。当然だろう。俺は彼女を土砂降りの中放って家に帰りなにも状況を説明せず、数ヶ月学校を休んだのだ。最低だな俺…「怒らないんだな。」と言うと彼女は「怒ってるわ。でもそれ以上に心配だったの」と即答した。俺には勿体無いくらいの彼女だとこの時再確認した。俺は一から全て話した。親父が死んだこと。家族が大変なこと。特に母親の精神状態がよくないことも全て。「…てことがあったんだよ」俺はずっと下を向いて話していたが、最後は笑顔で彼女を見る様に笑った。彼女に弱っているところを見せたくなかったからだ。しかし彼女を見るとそこには驚くべき光景があった。「どうして君が泣いてるんだよ…。」彼女は泣き喚かなかった。涙がスッと頬を通る。それはまるで流れ星の様で、俺は『綺麗』だと思った。彼女は「あなたは嘘をつくのが下手なのね」とスマホを取り出し、カメラモードに切り替えるとそこには笑顔とは程遠い悲しい顔をした少年がいた。「笑えてると思ってたんだよ」と言うと自分に涙が流れていることがわかった。彼女はスマホをそっと机に置くとこう言った。「私にだけは嘘をつく真似をしないで。私はどんな時でもあなたの味方よ。それに、嘘をつくことは強くなることではないわ。もしも誰かがそう定義するなら私はあなたにずっと弱者でいて欲しい。だってそれでも私にとってあなたは紛れもなく私の自慢のあなたなのだから。」それを聞くと俺はなにもかも忘れてくしゃくしゃに泣き喚いた。みっともないと誰もが思うだろう。だけど彼女は。彼女だけはそんな俺を自慢だと言った。ならせめて弱くても良い。彼女が誇れる自分になろう。そう決心したところで二つのコーヒーがコトリと置かれた。「ありがとう東条。俺、本当は強がってたんだ。親父が死んだ理由があまりにもかっこよかったから、救われた女の子がほとんど毎日線香をあげてくれるから、悲しんだ顔を見せれなくて。だからさ東条、ありがとう。」と嘘のない素直な笑顔を見せると「凛。」と聞こえてきた。俺は反射的に「え?」と聞き返すと東条は「凛、って呼んで欲しいの…」と耳を真っ赤にして俯いてそう言った。俺は今しか言えない。いや今言わなければならないような、そんな言葉を口にした。「凛」 「はい。」



「俺と、付き合ってください。」

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