第3話
「東条これ…ありがと。面白かった。」と緊張で片言になりながらも彼女に本を返した。俺、手汗すごいなぁ今だけ手汗抑える秘密道具ないかなぁどっかに狸型なんでもありロボットいないかなぁ。と考えていると彼女は「面白かったでしょ」と言って読んでいる本をパタリと閉じた。「最近本を読み始めた俺にとっちゃ難しすぎるよ。」俺はそう言って慣れない笑みを作った。すると彼女に「ニヤニヤしないでくれる?変態。」と言われてしまった。「なんだろう。今新しい扉を開きかけたような…」と俺が呟くと彼女は心底呆れたようにため息をついた。俺はそんなくだらない会話を心地良いと感じ、もしかしたら彼女も…と思い他愛のない会話をしてみることにした。「えっと、東条って家でも本読んでるの?」「…………………。」わかってましたよ?確かに俺も趣味の話が出ると誰だろうと熱く語っちゃうからね。泣いてないよ?うん。本当。とハートの形をしたガラスがメリメリとヒビ入っていく音を聴いていると彼女は「そうよ。」と言った。俺は会話が成立することがこんなにも嬉しいことだなんて今まで思いもしなかった。もしかしたら恋人とは行かずとも、友達にはなれるかも…!「この後って予定空いてる?」恐る恐る聞くと「ないけど。」と無愛想に言われた。俺はチャンスだと思い「カフェかどこかでお話ししませんか??」とダメ元で聞いてみた。彼女は「良いよ。」と言った。「まぁそうだよね。何様のつもr…え?今なんて???」と聞き返すと心底面倒くさそうに「どこに行くの」と嫌な顔をされてしまった。だがこれしきのことで折れるかと俺は「良い店知ってるんだ。穴場なんだけど行かない?」と言うと彼女は無言で立ち上がり「行かないの?」と先に教室を出て行ってしまった。「マイペースだな…」と俺も急いで教室を出た。なんだか不思議な感じだ。まるで前にもあったような…デジャヴってやつか。
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