学業を進んでやろうなんて奴は人間じゃない


「そういえばさ、一日中家にいるけど、なんで働いてないの? 私知ってるよ。そういうのニートっていうんでしょ?」

「まぁ、正確には大学生だから学生なんだけど、大学生っていうのは、大金をはたいて学生という大義名分を持ったニートみたいなもんだから、あながち間違いでもないのがな」


 大義名分を持ったフリーターもいるとは思うけど。


「ふーん。学校ってどんな感じだった?」


 ああ、そういえばこいつは学園生活も知らないのか。


「ドラマとか映画とか、学園ものも多いだろ。見なかったのか?」

「そりゃあ見たけど、実際にどんな感じかはわからないじゃん。授業が45分とか、大学は1時間超えてるとか、そういうのは知ってるけど。でも実際に受けてるところが垂れ流しになってるわけじゃないし」

「たしかにつまんなそうなところはカットしないと放送事故だもんな」

「やっぱつまんないんだ?」

「興味のないことだろうと受けなきゃいけないからな。人によっては拷問だろ。単純に授業をする先生自体が生理的に無理って場合もあったし」

「ふーん。めんどくさそうだね。いかなくてよかったや。ゲームの方が100倍楽しそうだ」


 そう言って、彼女は携帯ゲーム機を充電器から外した。まあ、こいつの場合は行けなかったが正しいのだろうけども。僕も授業なんて受けなくて良いなら受けたくなかったなあとは思う。


 ただ授業を受けずに済む対価として、彼女のような生活を送らなければならないなら、僕はたぶん学校に行くことを選んだと思うけど。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る