第5話 老騎士と吸血鬼と誘拐と


 突如、目の前に現れた執事服の中年男性は村の少女を抱えてヨハンたちの目の前を通り過ぎようとしているのだが何故か皆、全く微動だにする事が出来ないのだ。目の前にいる執事服の男性の力によって体の自由を奪われてしまっているのだ。


「抵抗しようとは思わない事です。貴方達が何人束になろうとも所詮は我ら吸血鬼ヴァンパイアの敵ではないのですから」


「さて、それはどうかな」


 皆、返事する事すら出来ないなか、たった1人この技を破った者がいた。セントラシア公国の最強剣士イーサン・ローグフェルドだ。


「バ、バカな私の技を破っただと————」


「オレはセントラシア公国からお前ら吸血鬼ヴァンパイア供を倒すためここへ派遣されて来たイーサン・ローグフェルドだ」


 執事服の吸血鬼ヴァンパイアはイーサンをギロリと睨み、雄叫びをあげた。


「ヴオォォォォァァァッ!」


 イーサンは僅かに身構え、踏み込む。


剣技ソードスキル『斬糸結界』」


 バキンッ————


 何かが音を立てて崩れていった。

 皆は自らの口、手足が動くと気付くと目の前の敵に対して即座に身構えた。


酸性矢魔法アシッドアロー


 ジュロムは魔法を唱え酸の矢を放ったが執事服の男性は軽く受け止めた。


炎疾走魔法フレアアクセル


 ドギューン!と凄まじい音を立ててボミエはピックルを抱いたまま爆炎と共に加速し、そのままピックルを放つと彼女はボミエを踏み台にして高く飛び、執事服の男に鋼鉄のメイスを叩きつけた。


「うおおぉぉぉっ 死んどけオラァ!」


 彼女は狂ったように執事服の男の脳天を叩いて!叩いて!叩いて!叩いて!叩いて!叩いて!叩いて!叩きまくったーっ! 彼のまわりは血塗れになり、頭からピュッピュッと血が噴き出し、彼はピクリとも動かなくなった。


「うおおぉぉぉっアタシは最強だぁっ!」


「やったぁピックルは最高ニャ♡」


「そりゃどっかのボンクラ爺とはちがうわよ♪」


 ピックルは直ぐにボミエの所へ駆け寄り、2人は

 クルクルと回りながら抱きしめ合っていた。


 ヨハンは複雑な気持ちで2人を眺めている。


「ワ…ワシらは勝てたのか?」


 ヨハンは安堵の表情を浮かべ左右に目を配り、皆の無事を確認すると執事服の男の遺体の方を見ると

 遺体はすでに燃えてしまっていた。


「そういえばあの少女はどこへ行ったんじゃ」


 ヨハンは視線を周囲のさまざまな場所に向けると

 月明かりの中、翼の生えた人型の何かが少女らしき者を担いで空を飛びまわり、それはもうすでに遠ざかっているのが見えた。

 

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