文芸部員は魔法使いさん。
黒い月の子(仮)
はじめましてのプロローグ
彼はただその場に立ち尽くしていた。扉に手をかけたまま。それは中途半端に開いたまま。
びっくり驚いたのか呆然とボーッとしていた。ちょっと未だに理解が追い付かないように。
視線の先をたどれば戸惑いを隠せないような一人の少女。彼女もまた彼に負けず劣らず驚いている......のだろうか?
その瞳は青く、まるでラピスラズリのような輝き。今は驚きの感情を主張するかのように見開かれている。
やや幼さの残る顔立ちは可愛らしく、ショートボブの黒髪が風になびく。
窓から臨む空模様は青く晴れ渡りつつも、そろそろ日が傾いてきた頃合いだ。
と、これだけ見ればアニメとか小説でよくあるベタな展開。放課後の教室、あるいは部室でバッタリ未知との遭遇。
しかも両者が絶賛戸惑い真っ最中な原因は彼女の秘密を知ってしまったこと。知られてしまったこと。
やはりベタベタのよくあるお馴染みな展開。ラブコメを彩る定番イベント。
しかし今回がちょっとばかり特殊なのは、彼女の足元に渦巻く何かの紋様。
淡くも美しいどこか神秘的な光を放ってぐるぐる回転。薄暗い部室を優しく照らしていた。
人はそれをこのように呼ぶ。魔術方陣、もしくは魔法陣と。
「危ないっ!」
文芸部員は魔法使いさん。 黒い月の子(仮) @Kuroluna-usagi
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