躊躇なく

@heibon-nonki

第1話 選択の始まり

母親のお腹から産声を上げて産まれてきた時、人はみんなゼロだと思いますか?私は思わない、だって生まれもって何らかの障害がある人、望まれていないのに生まれてこなければならなかった人など様々な理由があるから。もし、産まれた時からゼロじゃなく1やマイナスがあるのならば、しいて言えば私は1に近い方だと思う、だって実家がそこそこ裕福だから。

何をもって「うちは普通」とか「うちは貧乏」とか言うのか私にはわからないけれど、うちは俗に言う地主で、地元ではマンションを三棟経営して、コインパーキングにビルの貸し出しと都会ではないものの地元ではそこそこ有名な一家で「裕福」と言われてきた。

その家庭に女の子として産まれてきた私は、蝶よ花よと言わんばかりに育てられてきた。

私に関して初めてされた選択、選択1は名前だと思う。母に聞いた話によると候補は最終的に2つになり、産まれた顔を見てから決めることにしたらしい。2つの候補は「百合香」と「菫」。

どうしても花に関連する名前にしたかったそうだ。

「お母さんは両方好きなの、ユリはゴージャスでスミレは可愛いでしょ?」だそうだ。

結果、私は「菫」になった。ゴージャスにはならないと産まれた顔を見て思った両親は、選択1を正解したのだと思う。今まで名前がしっくりこなかった人に出会ったことがない私は、名前と同じように人って変わっていくのだろうかと不思議に思う。

俗に言うキラキラネームには出会ったことがないのも、まだしっくりこない人に出会えていない1つの理由かもしれない。

しかし、私自身が1番名前がしっくりこない人ではないかと自分で思う。「菫」が似合う女の子とは自分では到底思わない。花の名前は可愛いが、似合うにはそれなりの容姿というか、雰囲気というかが必要な気がするからだ。

かくして「菫」となった私は、唯一の女の子と言うこともあり特に誰とおもちゃを取り合うでもなく育った。

6つ上に兄「雄大」がいるが、兄は長男として私より更に過保護に甘やかされて育てられたと思う。私が言うのもあれだが。母の溺愛ぶりは、大人になった今でも収まるところをしらない。むしろ、自分でも兄への愛を持て余してどうしていいのかわからないのではないだろうかと思う。気持ちが悪い。

親が子供を愛しているのは素晴らしいことで、それが当たり前だと思わないけど、親でもなんでも度が過ぎると逆に不快な気持ちになることってあると思う。

幼稚園、小学校と当たり前の様に私立に通い、同じような金銭感覚の子供達、親と過ごした。みんながドラマやInstagramで見る、ママ会ランチ、お誕生日会に高いプレゼントに豪華なケーキなどそれが当たり前だった。幼稚園に入るためにお教室にたくさん通った記憶などが全くないので、自分の名前が言えて資産があればよかったのだと思う。平穏無事な幼稚園、小学校生活だった。

しかし中学校へ上がるにあたり、私は外部に出たい、俗に言う私立から公立へ通いたいと思うようになった。地元の家の近くの公立へ。

それが私の初めての大きな重要な選択だったように思う。

実際、私の決意はすんなりと両親に受け入れられた。母は少し驚きはしたものの、驚いた理由は「高校や大学で受験だよ?勉強いっぱいしなきゃ駄目だよ⁇」だった。私は頭がいい訳ではないが、母は「女の子はそんなに賢くなくていいのよ!」な人だったので、私がどこに通おうがそこまで気にぬらなかったのだろう。父はマスオさん状態なので

「お母さんさへよければ」な感じだった。

こうして私は地元の公立中学校に通うことにした。

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