2.

みんな準備が忙しすぎて私に気づいていないようだ。私の誕生日パーティーなんだけどね。無駄に広い階段を下り、下へ向かう。リオの記憶がなかったら広すぎて迷子になりそう。


「あ、いた」


あの子ずっと泣いていたのだろうか。泣き疲れてもう眠たそうにしている。私には弟と妹がいる。ちなみに双子だ。今は3歳なのでこんな所にいるはずはない。誰かが一緒にいるはずだ。お母さんは私たちのことを愛してくれていると思う。お父さんの方は微妙なところだ。ただ子供たちに興味が無いのだと思う。


「だいじょーぶ? ないてるの?」


「……てんし?」


涙をポロポロ流していたようだが、近くに人がいると安心したようだ。


この子よく見ればシオンではないか。一条家と入江家は親同士が仲がいい。母親同士が親友らしい。

シオンは母親と来ていてはぐれてしまったのだろうか。


「おなまえは?」


「し、シオン。てんしさまは?」


「リオだよ。あとてんしじゃなくてにんげんだよ。どうしてここにいるの?」


「おかーさまとはぐれたの」


そう言うと時分の状況を思い出したのか目に涙をためてる。美少年って泣き顔も綺麗なんだなあ。そんなことを考えている時間はないのでシオンのお母さんを探すためシオンの手を握った。


「おかーさまさがしにいこ?」


シオンはうなづくと静かに着いてきた。一応シオンのお母さんの居場所の目星はついている。テラスだ。


「シオン、おかーさまあそこにあるよ。リオちょっとすることあるからひとりでいける?」


「うん、リオありがとう!」


シオンはもう泣いていない。落ち着いたみたいで良かった。シオンは本来落ち着いた性格をしている。大きな声で笑うことやましてや怒鳴ることなんてしない。それは昔ヒロインと出会ったことが原因で自分が守る側にならなければならないと思ったかららしい。

昔と言っても10歳の時だ。あと5年しかない。確かお兄さんが優秀過ぎて比べられるのが辛いと悩んでいた時期だ。お兄さんもかっこいいのだが何故か攻略対象にはならなかった。勿体ないと何度思ったことか。シオンに、次ははぐれないようにね、と伝えると私は自分の部屋へ急いだ。ハナに怒られる!! 急いでいたのが仇になったのか曲がり角で人にぶつかってしまった。


「ふぇ……」


5歳の身体で大人にぶつかったため結構飛ばされた。涙腺も5歳仕様になっているらしい。中身は18歳なので大声で泣いたりはしないが、涙は止まらない。相手の人はオロオロして周りを見るが誰もいないようで余計に慌てている。


「あ、おいで……?」


もしかしてこの人って。


「パパ?」


「っ! あぁ、そうだ」


リオがお父さんに嫌われていたというのは勘違いのような気がする。初めての娘とどう関われば良いのか分からなくて近づかなかったとしたら? え、パパ可愛すぎない? 少しくらいは意地悪してもバチは当たらないよね?


「パパ、なんでリオとおはなししてくれなかったの?」


もう涙なんて止まってしまった。パパが可愛すぎて。


「すまなかった。リオ誕生日おめでとう。明日にでもお出かけしよう。」


「おでかけ!? リオたのしみ!」


家族でお出かけなんてリオとしては初めてのことだ。どこへ行くのだろうか。5歳だし遊園地とか? でも、双子がいたら外出って大変なんじゃ……。


「二人で行こう。どこへ行くかはリオが決めたらいい。」


「でーとだ! リオ、パパとでーと!」


パパも嬉しそうに笑ってくれた。前世では物心ついたときからお母さん、お父さん呼びだったからママ、パパ呼びは少し憧れだった。いずれは変えないといけないけどね。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る