ヒロインの性格が死ぬほど悪い乙女ゲームに転生したけど、私は何もしていないのに巻き込まれる悪役令嬢だった。

ふらわあ

1.

「ごめんね、リオ。俺、好きな人出来たから一緒に居られない。これからは1人で登校してね」

私の幼なじみ、一条シオンは隣に可愛らしい女の子を連れて私に言い放った。食道のど真ん中で。こんな人が多い時間帯に大きな声で言う必要ある? 別に婚約してる訳でもなにの? 隣の女の子は怯えた表情をしている。私何かした? というか初対面だと思うんだけど。


「それと、マリアをいじめたって聞いたんだけど」


え、私この子をいじめたの? 何度も言うけど初対面なのに? あ! にらまれた!! 隣の子ににらまれたよ!!?


「そんなことしてません。私、庶民だからといっていじめをするような女ではありません。十数年一緒にいた私よりもその方を信じるのですね。」


あれ、口が勝手に。ん? これって乙女ゲーム? 私転生したのかな。でも、体を動かそうとしても動かない。それにどちらかと言えば画面越しに見てる感じ……。


「ま!……て……さい!」


ん? なにか聞こえる。お母さん、では無いよね。


「リオお嬢様、起きてください!」


「んぇ、だれ……?」


「寝ぼけていらっしゃるのですか? ハナですよ。今日は5歳の誕生日おめでとうございます。」


5歳? 私、昨日家族に18歳の誕生日を祝ってもらったはずなんだけど。


「誕生日パーティーはお昼からですがもう準備を開始しなければなりません。……もしかして具合が悪いのですか? 昨日あんなにドレスを着れると楽しみにしていらっしゃったのに。」


「え、だいじょうぶだよ! ハナさん」


……?」


「ハナ! ちょっとのどかわいちゃった!」


「かしこまりました。少々お待ちください。」


そういうとハナは部屋から出ていった。なんてことだ……。夢で見た理不尽な女の子、入江リオに転生してしまったらしい。良いのか悪いのかリオの記憶が思い出されてきた。


「今日初めてシオンに会う日だ。……多分」


自信がないのは許して欲しい。攻略対象や、所謂悪役令嬢の幼少期の話は乙女ゲームでは描かれていなかったのだ。乙女ゲーム『玉の輿のゲット法』は……題名の通りだ。従来の乙女ゲームらしくないがそれが新しいと人気が出た。このゲームのヒロインである、立花マリアは夢の中でリオが言っていた通り庶民である。本当に普通の。それ以外の登場人物はみんなお金持ち。私も含めて、だ。このヒロインはとにかく性格が悪い。リオよりもだ。悪役令嬢より性格が悪いヒロインっていていいのか。性格悪いというか腹黒? まぁ、それで攻略対象たちを落としていくのだ。悪役令嬢と言われているリオだが、特に悪い所はひとつもない。言わば全て冤罪である。ヒロインの方が悪役だと思う。騙されるヒーローもヒーローだが。


「うわっ! ふぇ、」


……誰かの声が聞こえた気がする。しかも泣き声っぽかった。仕方ない、様子を見に行くか。声的に小さな子だ。リオって弟か妹いたかな? ハナが戻ってきて鉢合わせるのはまずいので窓から出る。……と思ったが今の私の体は5歳児。どう考えても無理だった。でも、外から泣き声が聞こえるんだよ。助けに行けって私の心が叫んでる。諦めてドアから出るか。


「どこへ行かれるのですか? 水をお持ちしました。少し遅くなり申し訳ございません。」


「だいじょぶ。ちょっとといれいきたい」


ゴクッと水を一気飲みする。トイレに行くふりして外の様子を見に行く。それでいい。


「わかりました。付き添いは他のメイドを連れてきます。パーティーの準備出来外せない用事がありまして。」


「わかた。まってる!」


本当にトイレに行きたかったら待てないよ、普通。まぁ、逃げる隙ができてラッキーだ。

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