10.
「ほんとにかなのこと好きだよ」
「み、水瀬くん??」
「しゅんって呼んで」
なにこのかわいい生き物。こんな捨てられた子犬みたいな顔されたら断れないよ。
「しゅん?」
「ふふ、かわいい」
しゅんってこんな子だったの!?
天然タラシ……。
「ありのままの僕が好きって言ったよね?」
言っていない。断じて言っていない。しかも私口に出して言ってないし。しゅんの腹黒説を推したい。
「全部顔に出てるよ。 ほんと変わってないね。」
えぇ!? 私顔に出やすいのか、気をつけないと。
変わってないってどういうことだろう。私たちどこかで会ったことがあるのかな。私が乙ゲーにきたの3日前だよ? 知り合いなわけ……あるのか。あかりとも友達だったわけだし。
2人で話しながら学校へ向かうとあかりが靴箱で私たちに向かって手を振っている。
「2人で来るなんて聞いてないよ!!」
私もそう思ってたよ。4人で行くんだと思ってた。
「あ、かなちゃんに言いたいことがあって……。かなちゃん今日図書委員の居残りだよね? 私今日お兄ちゃんが迎えに来るから早く帰らないと行けなくて、一緒に帰れないの。」
そう言えばあかりってお兄さんいたんだったっけ。
「分かった。気をつけて帰ってね。」
まだ朝だけど。きっとお兄さんもイケメンなんだろうなあ。
「ねぇ、かなの朝は僕のなんだけど。」
私の朝ってなんですか? それがしゅんのっていうのもわからない。
「何言い合ってるんだ」
「司」「花京院くん」
花京院司ね。あ、この人4人組の1人だ。髪の毛赤いからこの人の印象すごく残ってるんだよね。名前は今知ったけど。
「あかりが僕のかなをとろうとするの!!」
「かなちゃんは私の親友なんだよ!」
無視して教室に向かう。私はこっそり靴を脱ぎ上靴に履き替えた。花京院くんと目が合ったのはきっと気のせいだ。
「れいな、おはよう」
「かな! おはようございます。あのかなにお願いがあるんですの。」
「どうしたの?」
「座席を変えて欲しいという生徒がいましたの。だからあの……かなと綿貫さんの席を交換することは可能かしら?」
綿貫さんって私の列の1番後ろ……しゅんの隣!?
「え、いや……」
「いいよ? 隣うれしいね?」
「いいんですの? 感謝しますわ!!」
なんでしゅんが返事するの!? こ、断れる雰囲気ではない。私はどういたしまして、と答えるしか無かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます