バッドラックアルメリック

春嵐

vs機械

 機械の膝に、脚を叩き込む。


 そのまま身体の軸を斜めに。


 首元めがけて、もう片方の脚。機械がぼろぼろに砕けた。部品で身体を傷つけないように、少し退がる


「これあと何体いんの?」


 もうひとり、闘っている相棒に声をかける。


「三十ぐらいじゃね?」


 相棒に取り付いた機械を、左脚を思いっきり振って引き剥がす。相棒もそれに合わせて右腕をぶつける。派手な音が響き、機械が鉄くずに変わっていく。


「残り二十八」


「はらへってきたな」


「早くね?」


 右、左、右。飛んでくる機械の腕を躱し、懐に入って投げ飛ばす。


「おっ。おっお」


 相棒。また引っ付かれている。機械の背中に拳をぶつけて、顔のところを引っこ抜いた。


「なんでおまえ、そんな取り付かれてんの?」


「いや、これ、注意したほうがいいな。投げられん」


「え、そうか?」


 突っ込んできた機械。腹のとこに膝を打ち込み、半身で回転して背中をとって、首を掴んで、投げる。


「投げられっけど」


 新しく導入される予定だった警備用の機械が、全て見事に暴走していた。


「いや、ちょっと見てろって」


 相棒。機械の胸のところに数発掌底を打ち込み、腕をとった。


「あ」


 機械の腕がぐるっと、回った。投げられず、引っ付かれている。


「関節が極めらんねえのかこいつら」


「たすけて」


「はいはい」


 勢いをつけて跳び、肩をぶつけて吹っ飛ばす。


 相棒だけが受身を取り、機械は地面に叩きつけられる。


「逝くわ」


「いやいや。肩ぶつけただけだから」


「生還帯」


「なんて?」


 機械。腕を弾き飛ばし、股間に脚をぶつけた。


「うわ」


「いってえだろ、これは」


 機械。効いた感じはしてない。


「んだよ効かねえのかよ」


「縮み上がるわ」


 そのまま身体を回転させて、肘をぶつけて倒す。


「たしかにこれは、腹減ってくるな」


 関節を極められないので、全部投げるか打つかで倒すしかない。ようするに、制圧ができない。倒していくだけ。


『はいおまたせ。来たよお』


 通信が入る。


「はやいところやってくれ。つかれる」


『って言われてもね、警備用だからさ、ハック簡単にできないよね』


「じゃあなんでハッキングされてんだよこいつらは」


 機械。蹴り飛ばして、距離をとる。


『そもそもさあ、用心棒はいらないって解雇されたわけじゃん。もう無視してよくない?』


「そういうわけにいくか」


「これが街に出てみろ」


『正義の味方じゃあん。かっこいいねえ』


「うるせえ」


「ただの不運な男が二人だよ。ちっくしょうめ。超過労働分の金をよこせっ」


 相棒とふたりで距離を取りながら、壁際まで退がる。


「おい、まだか」


「おなかすいたぞ?」


『はい。できたよ。半分ハック』


 機械同士が、争いはじめた。


『あと三、四台ぐらい壊してね』


「じゃあ五台壊そう。タグ付けろ」


 五台。点滅する。


「行くぜ相棒」


「おうよ」


 二人同時に走り出して。


 一台の脚を引っ掛けて次。左脚でかちあげた。視界の端で、一台目が相棒に吹っ飛ばされたのを確認する。


 三台目とぶつかり合う。相棒。さっき左脚でかちあげた二台目を叩き落としている。目の前のぶつかり合っている三台目。思いっきり頭突きをして倒す。


 体勢を低くする。相棒が自分の背中をばねにして、宙に跳んだ。


「ラスト2」


 叫びながら、一台の腕を掴んで、もう一台の首元に脚を引っ掛ける。


 宙から勢いをつけた相棒が、腕を掴んだ側にぶつかる。もう一台。ふたりで脚を叩き込んで。砕け散る機械の音。


「よし終わりっ」


「逃げろっ」

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