第13話 学芸院凰雅を狙う闇
世界のとある場所、暗い部屋の中。正体不明の男女が集っていた。
醸し出されるその雰囲気は悪そのものであった。
それもそのはず、ここは六大四天王三人衆の会合の場である。
「山本山元哉がやられたか・・・。」
低く、くぐもった声がその部屋に響いた。雰囲気からおそらくこの部屋でのリーダーのような存在なのだろう。
その声を皮切りに方々から声が聞こえてくる。
「ふん、所詮奴は六大四天王三人衆最弱。どうして名を連ねることができたのかわからないくらい弱っちい奴だったからなぁ。」
「だが六大四天王三人衆の一角が崩された事態、見過ごすことはできまい。」
「その学芸院凰雅って奴、今のうちに刺客を送って潰した方がいいかもね。」
皆が銘々に発言し、さながら談笑室のような雰囲気になった頃、初めの一言を発した人物が口を開いた。
「そうであるな・・・。で、誰が行く?」
「・・・。」
「・・・。」
「・・・。」
誰も声をあげない。さっきまでの賑やかさが嘘のように静寂が場を支配した。
恐らくこのリーダーの言葉の重み故のものであろう。
生半可な覚悟ではその圧を受け止めきれないのだ。
「我こそはと思う者はいないのか?」
それに痺れを切らしたリーダーがさらに言葉を続けるが手を挙げる者はいない。
「・・・偵察班によると奴の戦い方はストロングスタイル。単純に力が強い奴が相手となると俺の能力、【
「私?私は今やることが色々あってパタパタしてるの。忙しいから無理。あんたは?」
「俺様ちゃんはいま歯医者に通っているところ。悔しいが治療が終わるまでは無理だ。」
話がまとまる気配はない。
それは六大四天王三人衆程の強者が目的を持って動く、ということの重みを彼等自身が理解しているからである。
それ故に簡単に返事をするわけにはいかないのだ。
「むぅ。皆色々な事情があるようだな。ならば今はまだ様子を見る段階ということか。」
議論の結論は出たかに見えたその時、どこからともなく足音が聞こえてきた。
「やれやれ、六大四天王三人衆ともあろう者が雁首揃えて情けないことですね。」
「お、お前は!」
闇から姿を現したのは何の特徴もない謎の男。
強いて特徴を探すなら目が開いているのか閉じているのかわからないくらい細い。
そして眼鏡をかけている男だ。そして敬語で話す。
それ以外の性格等については全く不明である謎な雰囲気を持つ謎の男だ。
「ふん、普段いくら呼び出しても全く会合に参加しない貴様が何を言うか。」
「おやおや、これはご挨拶ですね。たかが一人のルーキーに怯えている情けないあなたがたに朗報を持ってきてあげたんですよ。・・・学芸院凰雅の元に、あの男が向かったそうです。」
「な、なにぃ、あの男というのは、ま、まさか・・・。」
「そう。
「む、むぅ・・・。あやつが・・・。た、確かにあやつなら学芸院凰雅がいかに強かろうと全く問題になるまい。」
「う、うむ。あいつはこの会合に全く参加しないから俺は嫌いだが、だがあいつなら・・・。」
「そうね、あの人とは会話が無くなると気まずくなるから私も嫌いだけど、適任と言えるわ。」
「待ち合わせにいつも五分遅刻してくるから俺様ちゃんも嫌いだが、奴は戦闘力においては六大四天王三人衆の中でも随一。最強だからな。」
「うむ。学芸院凰雅がいかに強かろうとも、あやつに敵うわけがない。悪魔を作り出すと言われる魔造寺家が誇る最高傑作、それがあの魔造寺狂獄丸なのだからな。」
「・・・ふふふふふ、はーーはっはっはっ!やはり世界を統べるのは我ら六大四天王三人衆であることは揺るがん。」
眼鏡をかけた男は笑い声で盛り上がる部屋を静かに出た。
「やれやれ、これだからこの組織はもう駄目なのです。学芸院凰雅、彼が現状を変えるきっかけになってくれればいいのですが・・・。ですが彼の元に向かったあの男・・・魔造寺狂獄丸の強さは本物。いかに学芸院凰雅と言えども、果たして乗り切れるかどうか・・・。」
学芸院凰雅の預かり知らぬ所で勝手に盛り上がる人達。
果たして凰雅の運命はどうなってしまうのか・・・。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます