第12話 学芸院凰雅と妹2
依頼を片付け、無事家に帰ってきた凰雅。
「おかえりなさい、お兄ちゃん。」
妹が物々しいマスク越しのくぐもった声で出迎えてくれた。凰雅がいつ帰ってくるかわからないため妹は家でこそマスクを外せないのだ。
鞄を置きに自室に向かうと
「ん?この匂いは・・・。」
部屋に入った凰雅は部屋にある匂いが充満していることに気づいた。
それは最早嗅ぎなれてしまった妹の匂い。特に布団からだ。
凰雅は心の底から、全くやれやれだ、と思った。
「部屋を掃除してくれたようだな。助かる。だが何故マスクを外したんだ?」
「え!?」
妹は凰雅のその言葉を聞いて狼狽えた。こんな態度では図星だと言っているようなものだ。
「・・・た、確かに掃除はしましたけど、なんでマスクを外したなんてわかるんですか?」
「わかるさ。愛する妹のことだからな。大方、俺の布団の匂いを直に嗅いだんだろう?」
凰雅は部屋から漂う、嗅ぎなれた酸っぱい匂いをヒントに鋭く言い当てた。
するとそれを察したようで妹はバツが悪そうにした。
「ご、ごめんなさい。ちゃんと洗ったつもりだったんですが・・・。」
「やれやれ。あまり妹に愛されるのも考え物だな。少しは兄離れをした方がいい。」
「・・・するつもりはありません。」
「やれやれ、本当に困った妹だ。」
その日の夜、凰雅はレペティションに明け暮れた。
世界の命運をかけた事件が起ころうとも、妹が自分の留守中に布団で何をしていようとも、どんなことがあっても凰雅は日常を変えない。
事件すらも日常に変えてしまう男、それが学芸院凰雅。
こうして学芸院凰雅の華麗なる日常は続いてゆく。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます