資金力を活かして中ボスを仲間にする②
敵の拠点近くにきた俺たちは、少し離れた丘の上で身を隠しつつ様子を伺っていた。
事前に得ていた情報の通り、敵の本拠地は魔王が持つ屋敷を中心に、魔物の住処が点在していて一つの集落のようになっていた。さらに外壁や堀で囲まれていて簡単には侵入できそうにない。
「堅そうだな……それにしてもここから見ていると、まるで普通の村みたいだな。正門を守っているのも魔物さんか?」
正門の近くには人影のようなものが、まるでNPCのキャラクターのように行ったり来たりしている。
「正門を守っている魔物は強力という話だよな」
「そうね……」
ヴィオラは険しい表情で同じ光景を見つめていた。
「だったら、まわりこんで堀と外壁を超えていった方がいいんじゃないか?」
「いいえ、そんな簡単なものじゃないわ。よく見てみて。外壁のあたりに感じるオーラを」
「オーラだって?」
よく目を凝らしてみると、外壁には紫色の湯気みたいなものが立っていた。
「なんだあれ?」
「魔王の魔力が張り巡らされているのかもしれないわね」
「おいおい、触ったらどうなるんだ?」
「さあ……、ダメージを受けるかもしれないし。もしかしたら敷地内の魔物が一斉に襲い掛かってくるかもしれないわ」
「ということは、被害を最小限に魔王のもとに行くためには、迅速に入口を突破して魔物にバレないように侵入する必要があるということか」
「そのようね……厳しい戦いになるのは目に見えてるけどやるしかないわね」
ヴィオラの表情は相変わらず堅いままだった。それもそのはず今まで魔王討伐に向かったパーティも屋敷にたどり着く前に、軒並み正門を守る魔物にやられてしまったという話なのだ。ボスにたどり着く前に中ボスにやられてしまったということだろう。
「なあ、ヴィオラ。噂では正門の魔物にパーティが返り討ちにされまくったという話だが、どれも同じ魔物なのか?」
「ええ…? そうみたいね。魔物『セレス』。強力なハルバードを使った物理攻撃だけでなく、魔法攻撃すらも跳ね返してくるみたいね」
「ずっと同じ魔物……」
「あなた、なにを考えているの?」
「そのセレスっていう魔物、言葉が通じるんだよな?」
「ええ。魔物でも高知能だから通じるはずや、といっても人間よりは知識があるわけではないから複雑な会話はできないと思うけど」
「なるほど……」
俺のなかには一つの妙案が浮かんだいた。もちろん自分の豊富な資金力を活かしての話だが。
「なにか考えているの?」
「……なあヴィオラ。正門の突破は俺に任せてくれないか?」
「あなただけに任せるって、冗談でしょ!?」
「おいおい、声が大きいよ!」
「ご、ごめんなさい!」
ヴィオラは心底驚いたように大きな声を出したが、敵には気がつかれていなさそうだった。冷静なヴィオラをここまで驚かせてしまうとは思わなかった。
「死ぬかもしれないわよ……?」
すると、隣でボーッとしながら光景を見つめるだけだったカーミアが突如口を開いた。
「ケータくん。記念と言ってはなんだけど……死ぬ前にボクと楽しいこと……しとかない?」
「するわけないだろ、この色魔! それに死ぬつもりなんて全くないからな!」
ただ、命懸けの作戦であることは間違いない。高鳴る胸と震える脚。それを悟られないように深く息を何度か吸い込んで、吐いた。
カーミアとヴィオラには指示を出した。俺の後を気配がしない程度の距離につけさせ、もし作戦が失敗した場合は全力で救い出して欲しいと。
敵拠点の正門に向かって真っ直ぐに進む。なるべく怪しまれないように正面から堂々と。やがて魔物セレスの姿がハッキリと目視できるようになった。
魔物セレスは、茶色く薄汚れた布切れを巻いているが、腕や足は引き締まっていてその身体がのフォルムが服の上からでもハッキリと浮き上がっている。
銀色の髪には鬼のツノのようなものが生えていて、青い瞳が美しい。魔物というのは名ばかりで美少女にしか見えない。
「どうも、お前がここの門番のセレスか?」
「人間……? 死ににきたのか?」
魔物セレスは手に持っているハルベルトを構えたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます