資金力だけでパーティを最高ランクにする③
カーミアと名乗る少女は履いているヒールの音を響かせながら、ゆっくりとこちらに向かってきたかと思うと、俺の正面で立ち止まった。
「受付で話したのに、ボクのことを知らないっておかしいと思ったんだよねー。当然グランシルバ出身じゃないんだよね、いったいなんの用事?」
カーミアは屈んで、縄で縛られて倒れている俺の顎を指で軽く撫でてみせた。ふいに彼女のスカートの中が見え……。あれこの娘下着履いてな……
バチィ!
次の瞬間、ビンタが俺の顔に飛んできた。
「エッチ! 自分の身に危険が迫っているというのにいい度胸じゃん!」
顔を真っ赤にして睨みつけてくるカーミア。そっちから見せてきたようなもんじゃないか……。というかなんて下着履いてないんだよ……。
「ちょっと待てよ、俺は『グランシルバ・イージス』のメンバーと話したいと言っただけだぞ。それだけなのにこの仕打ちは酷いんじゃないか?」
「『グランシルバ・イージス』のメンバーと話したいだなんて、自分は不審者ですと言っているようなものなんだってば。常識だよっ!」
「そんな、常識なんて知らないぞ?」
ヴィオラの方をチラっと見たところ、彼女は小さく首を横に振る。小さな声で「モンスターばっかり倒していたから、常識とか流行に弱くて……」と呟いている。とても頼りにはならなさそうだ。カーミアはその光景を一瞥して口を開く。
「知らないなら教えてあげる。普通のパーティはギルドで仕事を受けてモンスター討伐を行ったり、言わば『攻め』のミッションをするけれど。私たちのパーティはグランシルバを外から来た敵から守る、いわば『守り』のミッション専属なの」
「守りのミッション専属?」
「そう。グランシルバを守るためのパーティ故に、グランシルバ外には名前が知られていない存在。それが私たち。外部には名前も知られてないのに、明らかに部外者であるあんた達が話があるなんて、不審行動以外になにものでもないってわけ。だから拘束させてもらったの!」
かなり強引だけど、要は疑われただけか……。
であるならば、ちゃんと話をすれば分かってくれるのかもしれない。
「じゃあ、俺の目的を話をさせてくれ!」
「それには及ばないわ。話する気なんてないから!」
カーミアは意地悪そうに舌を小さく出した。
「なんで、話もできないんだよ……」
「悪く思わないで。不審者は平等に裁く。それが私たちパーティのルールなの。従って貰えば悪いようにはしないし。グランシルバの市民として歓迎するわ」
「裁く……だと?」
「そう。あなたたちは私たち『グランシルバ・イージス』の権限で一年間ほど独房に閉じ込めさせてもらうわ。そこでこの街のルールを徹底的に学んで貰う」
「一年間も……!」
「ええ、一年間。大体それくらい拘束すれば悪意を持って近づいてきた輩でも、大抵『順応』してくれるから。ふふっ!」
順応というか、それは『洗脳』というのではないだろうか。カーミア達は俺たちのような不審者を捕まえて無力化することで、街の平和を守ってきたのだろうか。それにしても、そんなに長期間拘束されている時間も余裕もない。早いところこの場から解放されないといけない。
「金ならある……」
「えー、お金なんていらないけどなぁ。それよりはお兄さんが身体で払ってくれたほうが嬉しいかも!?」
「身体?」
「うん!」
そう言ってカーミアは地面に膝を落とし、俺の顔の近くに唇を近づけてきた。
いきなりどうしたんだ? と不安に思っていたそのとき。
「ふふっ、いただきます♪」
と言って俺の耳を、その唇と舌で舐めだしたのだった。
彼女の熱い吐息とぬめりとした唾液の感触が伝わってくる。
「お、おい! なにやってるん……だよ!」
「ふふ、やっぱり美味しいっ……困ったなぁ。みんな見ているのにボク昂ぶってきちゃったよ。このまま続きしようかぁ」
なんと、カーミアの手が俺の下半身に伸びてきた。
彼女の吐息の音と小さな嬌声を聞いているうちにだんだんと、頭もぼやけてきてしまう。幼さい見た目の少女に、このままいいようにやられてしまうのか。
そう覚悟を決めたそのときだった
「危ない……この子はサキュバスよ!」
ヴィオラの声が部屋中に響き渡って、我に返る。
「サキュバスだと?」
「ええ。彼女の身体にサキュバス特融の刻印が刻まれたのが見えたの。そのまま淫欲に飲まれてしまったら、徹底的に絞られてそのまま死んでしまうのよ!」
「えー、ネタバレは嫌だなぁ♪」
カーミアは俺の身体からパッと離れた。危ないところだった。ヴィオラの気づきがなかったらそのまま腹上死してしまうところだったかもしれない。
「くそっ、このままじゃ埒があかない。これを見ろ!」
俺は破れかぶれに、ポケットに忍ばせておいたいくつかのビー玉を、なんとか取り出すとそれを彼女達の前にばら撒いた。
その瞬間、俄かに周りがどよめいた声が聞こえる。
流石のカーミアも口をパクパクさせて動揺を隠せないようだった。
「ここからは俺のターンだ!」
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