レベル1勇者 資金力だけで魔王を倒す~金満パーティの強行戦略~
@onoyoiti
異世界いちの大金持ち
全てのやる気をなくし大学を中退してから二年目の春。実家で引きこもっていた俺は家の掃除をしていた。
引きこもりなのに掃除する意味があるのか、と自分でも思ったが、部屋を片付けることで少しでもこの鬱屈とした気持ちを前向きにしたいという狙いもあった。
押入れの奥の方には想い出の品が次々と出てくる。中学のとき部活で使っていたユニフォームや小学校のときよく読んでた漫画。懐かしいと一つ一つ手に取っているといつまでたっても掃除は終わらなさそうだ。そんな時だった。
「お、懐かしいな。ビー玉か」
そこには幼いころ何故か集めていた大量のビー玉があった。本当に大量で数えきれないくらいある。200〜300個はあるだろう。
「これは、いらないな」
即座に判断して、それをゴミ袋に入れようとしたそのときだった。
『はっじめましてぇー!』
使いこんだ子供机から小さな人型の妖精みたいなやつが出てきた。まるでディ○ニーのティン○ーベルかのようなフォルムだった。
「えっ、突然なに? 妖精?」
『見ればわかるじゃねーですか! 妖精でーす! 名前はアノちゃんいいます!』
「やべぇな……とうとう幻覚がでたか」
『なんか、そういう見知らぬものへの戸惑いとか、そういう描写かったるいんで端折ってもらっていいですかぁ?』
「えっ、は、はい」
思わず敬語になってしまう。妖精らしきものは忙しなく、くるくると冷やかすように俺の周りを漂った。
『結論から言いますと、私の世界を救って欲しいんです!』
「よく分からないけど、なんで俺が?」
『私の世界には三人の魔王と一人の統一魔王がいてね。マジでやりたい放題しているの! どれくらいかっていうと、ファミレスでドリンクバー頼んだあと全てのドリンク試して、しかも混ぜたりしてるくせに。全然飲まずに帰る奴ーってくらいやりたい放題しているの!』
「俺の質問、まるで無視かよ……」
『でね、神様に世界を救う勇者を探して貰ったんだけど、その結果あなたみたいなのよ。異世界とこの世界のチャネルを結ぶのそこそこ苦労したのよ?』
「俺が勇者……? でも、部員9人の弱小野球部でレギュラー外されるくらい運動もできないような男なんだぞ? やる気もないからF欄大も中退したくらいだし」
『確かに……バカグズそうな見た目の男だけど、神様がいうんだから仕方がないじゃん』
ちょっとそれは言い過ぎじゃないか、と思ったが、どうせこの世界で行き詰っているなら別の世界で頑張ってみるのもいいのかもしれない。ただし……。
「見返りはなにかあるのか?」
『神様にお願いして、出来る範囲の願いなら叶えてあげるわ』
「それは凄いな。その力があれば魔王とやらにも勝てたりしないのか?」
『確かにその力は強大だけど、魔王がいると邪気で発動できなくなるみたいー』
「そ、そうか……」
異世界でやってける自信は全くなかったが。俺が神様から選ばれた勇者ならばきっとなにか出来るんだろう。この能天気に考えられることは自分の最大の武器であり、弱点でもある。それに、願いを叶えてくれれば現実世界で大逆転できるかもしれない。
「よし、やってみよう!」
『じゃあ早速レッツ☆ゴー!(あんたの決意表明なんてどうでもよくて、結局嫌でも異世界に連れて行く気満々だったけど……)』
「心の声がダダ漏れじゃねぇか……」
『ごめん、ごめん! ん……あれ?』
アノと名乗る妖精は、ある一点を見つめて驚いたような表情を浮かべた。あうあうと口をパクパクとしてただごとではなさそうだ。
「どうかしたのか?」
『こ、こ、これなに!?』
「なにってビー玉だよ」
『超絶希少価値のある<ガァラス>を丸めた宝石じゃない!』
「は? これ? だからなんの変哲もないビー玉だよ。捨てようとしてたし」
『……これ一つで城が買えるくらいの価値があるのよ…それが、たくさん!? こんなもの見せられたらわたし……』
「お、おい!」
妖精はその場で意識を失い、部屋の畳にポテンと落ちた。
どうやら彼女がいる異世界では、このビー玉に相当な価値があるみたいだった。
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