第10話

 当日が、来た。


「大丈夫だって。緊張するなよ」


 幼馴染みの彼が、私に声をかける。


「俺の恋人も学祭に来てんだ。今日は失敗できねえ」


「え、なんでそんな」


 緊張させるようなことを。


「当たって砕けるんだよ」


 幼馴染みは、男のひとを好きになる体質だった。クラスの男子生徒も、それを知っている。知らないのは、この出し物のときに私を目の敵にした、女子生徒たちだけ。彼女たちは、私の幼馴染みも、私の好きなひとも、ひととして見ていない。消費する娯楽か何かだと思っている。


 それが、ゆるせなかった。


「え、あれ」


 ない。


 どうして。


「ない。私の、脚本。どうしよう。ねえ」


 あれ。


 彼。いない。

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